森岡浩之 「星界の戦旗Ⅴ宿命の調べ」 読了

前作2004年12月から、早いもので8年と9ヶ月。
私のサイトの開設が2004年1月でしたからその空白期間をまるごと包み込めるほど
長い時間であることはすべての星界読者に対しての試練でした。

まず新刊を買うのが苦労しました。
発売日前から配本数が多いところでも10冊というあり様で…(ハヤカワにしては多い気するけれど)
当日行ったら全部売れましたと言われて発狂したり。
当日に読みたいからわざわざネットで予約しなかったのに裏目でした。
仕方ないので配本数1冊のところに行って取りおきしてもらいました。

そうして手に入れた新刊を読了させて頂きました。
もちろん、最初に目を通したのは「あとがき」。
森岡氏の最初の発言に期待したのです。謝罪を期待していたわけでは無論なく、
4巻からの流れ…『なるべく早い内』という星界読者の中では
名言中の迷言であるこれに対しての応答があるのかどうかが気になっていたのです。
流石にしれっと書き出されていたら・・・と期待しても最近夜も眠れない日々を過ごしてきたのですから。
その答えはご自身の目で確かめて頂きたいところではありますが、
「作者は完結を諦めていない」、「第二部はなるべく早いうちに…」というお言葉を信じて生きていたいです。
信じる事と結果は別のもので結果が思い通りにならなかったといって それは信じた人の裏切りではないでしょう?というお言葉もありますし。

さて、前述のあとがきが8年9ヶ月という月日の一連に対する全てでは無論無く、
もちろんと言うと嘘くささがありますが物語が主たるものです。ましては第一部完なのですから、
主人公が波紋を獲得して子安さんを倒すぐらいの顛末がなければ一部は終われないのです。
問題ない範囲で書くと、ラフィールが皇孫女殿下から皇太女になるというぐらいには大きな変化が新刊の範囲です。
星界のシリーズは、主人公と我々読者が異邦者であるという視点に立たされて展開されており、
ストーリーの主軸というのは常にそこにあります。
戦旗シリーズではそこから更に踏み込んでアーヴと人類の最終決戦が描かれており、
前巻からその趨勢が怪しくなっており今巻で決定的になります。とても悲劇的な展開ではあるのですが、
新刊のサブタイトルでもある宿命の調べは良いタイトルだと読み終わるとわかりますが、
アーブ因子である宿命とは何か―――、
それが息苦しい展開においても読者に対してそれほど負担させてないトリガーになっているように見受けられます。

さて、次は何年後か。生きている間にはまた読みたい。まだ読みたい。

歴史の表舞台にとうとう立たされてしまったラフィール。
――ジントが抱える問題とは…ペネージュさんもおるでよ!。
‘オーソドックス’を凌ぐための正統派エトランゼスペースオペラ、第一部完

芝村裕吏 「この空のまもり」 読了

欲している物語というのは、いつだってあるがそれは自分の中であやふやだ。
それはそういうものであると認識しているが、
「この空のまもり」を読んで今回自分が求めていたのはこんな形だったのだなと思った。

ハヤカワJAは大抵挿絵がない、最近の迎合文化だとわからんけれど。
けれど、表紙にはキャラクターが書かれることもある。
ビジュアルの補整というものはそこにしか働かない。
だからなんだ?ということだが、顛末として今回そこに仕掛けがあってなるほどぅと膝を打つ。

舞台は日本で大久保。しかし、だいぶいろんな意味で負け続けた結果の日本と言える。
相変わらず芝村さんの書く日本は負けている様である。
けれど、あとがき曰く世情を反映したとのことで今回は大丈夫。
AR技術がもっと身近になり、拡張現実のタグ乱用され擬似現実を侵食されている。
もっとも侵食されているタグは諸外国のものであり、日本の地位を貶めるもの。
それらを政府が放置し対処できないでいる中、愛国の義をもって立ち上がるニート。
主人公がニートであるが、婚約が確定している幼馴染がいるし天才ハカーという、
もはや・・・という設定ではあるが、嫌いになれないパーソナルが人たらしとして確立させている。
その主人公が立ち上げた擬似タグを排除し、日本の空を守る防衛大臣として、
辣腕を振るい幼馴染を助けている「つもり」だったのが今回というのがストーリー。

後半、愛国心が暴走する。それは海を超えた隣の国の様に。
暴走するのが前提のような作品ではあるが、
本作はストッパーとして登場人物としてそれぞれの視点3つの視点で描かれ主人公へ収束する。
それは王道且つ実に気持ちいい瞬間でありエンターテイメントだった。
ラスト主人公の演説がある。
「愛国心は……誰かを傷つけなくても出来る。(中略)真なる日本とやらは、
折り目正しく助け合う秩序だったいつもの我々であることを」
というセリフが象徴出来る作品であり続けた、芝村トリガーが留まったことに安心し、
そこから先の擬似現実の描写が素晴らしすぎたことをここに記す。

わりと前半が重めだけれど、サクサク読める作品。読んで損なし。
芝村と早狩と吉宗でなんか作ってくれ。