俺の彼女(ツレ)はヒトでなし
■ 短評 ■
本家テイスト満載
■ シナリオ ■
本家というのはタカヒロちゃんワールドの事なのだけど、
そもそも塵骸魔京人外魔境なオーバースペックの人間が多いあの作品群の中で、
いっそのこと人でないのもアリなのではないか半島ぐらいくれてやろうじゃないかという思想の物語、たぶん。

色々超えちゃう学園恋愛ADVということで、冒頭よりかなりスラップスティックの匂いが強く漂う。
エロゲ史上初(たぶん)の空気ヒロイン古座野燈がポイント高め。
実態が空気なので、勿論自我の境界系のシナリオへと予想通り発展してくれる。
他それぞれも、かなりベタなキャラ付けでありユニークさというものは存在しない。

しかし、このゲームが誇るべき要素は設定の力強さである。
それは、過去培ってきた川神やら浜やら松笠などで進行しているバックボーンの力強さである。
あんな話やこんな話がちらほらと出てくる。
そして今作も誇る癖の強いキャラの進行がなにより心地よかった。面白いと言ってもいい。
好感触なのが、設定柄舞台から飛び出すことは出来ないが、
学園におけるおおよそのイベント+αを、ヒロイン毎に異なる進行をしてくれるということである。
最近の傾向として共通ルートに入るまでで学園という舞台装置の役目はほとんど果たされるシナリオが多いが、
その後のルートというのはヒロインが中心となるシナリオになるからである。
けれど、ヒロインルート後も目一杯舞台を踏み台に縦横無尽に遊びがある余地がなにより素敵だと思う。
そーいう無法さと言うべきか、物語性というのは特筆すべき事柄のように感じた。

また、物語の収束という点についても「あえて」秀逸と書くが、
そー落としてくる魔法という考え方というのは実にいろいろ影響を受けつつもうまく調理したのでなかろうか。
■ グラフィック ■
OPムービーは、特筆すべきことはないが、珍しくEDがキャラ毎に存在する。
高苗京鈴、キャラデザ。もうラノベでは仕事しないのかなぁ〜とか考えたり。
全体的にそれなりに良い。
Hシーンは規定回数をきっちりこなし枚数差分ともに上出来。
■ ヴォイス ■
篠崎双葉作品、しかもちゃっかりHシーンに乗っかってくるという・・・。
しかし、杉田はですぎだな。

九条信乃のブチギレ演技が一箇所ほんの少しだけあるのだが、必見の価値あり。
ギャップにやられる。
■ サウンド ■
あべにゅうぷろじぇくと feat. 佐倉沙織&井上みゆの楽曲。
元気があって結構である。音楽も特には無いが5pb。
■ システム ■
基本的システム。

ナビポイント方式で、獲得したナビがあるだけ選択肢の際にルートが示される。
スロットのARTみたいに、右、左、まんなっか! と対象キャラが言う。(一部虚飾があります
全然関係ないけれど、こうたろが原画の時にこーいう遊びを取り入れて欲しいものである。
全キャラクリアするとトゥルールート開放。

難易度、易。
攻略時間16時間。
■ 総評 ■
久しぶりに学園モノに可能性を感じた作品。
丁寧さと奇抜さ、そのアプローチというのは現に今までもいろいろあった。
展開が読めるけれど・・・ワクワク出来るというのはなかなかに稀有。
雪月陽花ライティングだったが、インターハートからずいぶん時間が経っており心配ではあったが
これからも是非業界でがんばって欲しいと注目したい。
虎の威を借りるなんとやらとは言うが、うまく咀嚼し可能性の一片を見出せる物語であるならば、
それは新しい何かだろう。

リソースは有限であるだけに、ヒットした作品というのは最近だとよく使いまわされる。
無駄とは漏れにはとてもいえないけれど無為にナンバリングを重ねたり、装飾するよりは、
その世界観を広げる方向性、姿勢というのは共感すべき所が多いのでなかろうか。
そんな風に感じた。

莫煩悩「なんでもないけど、これいいよ」に認定。
この賞は、断トツで凄いというわけではないけど、良作にラインに置いて一際安定した作品へ贈る賞。
7作目。過去受賞作品は「恋cute、こんねこ、青空の見える丘、Clover Point、さくらさくら、トロピカルKISS」
■ 78点 クラス A ■