Trample on "Schatten!!" 〜かげふみのうた〜
■ 短評 ■
徹頭徹尾、ヒーロー像を追い求めた作品。
■ シナリオ ■
ヒーローモノや戦隊モノって何気に数がリリースされているジャンルだったりするけど、
戦う+変身ヒーロー(ヒロイン)というジャンルは、なかなかに色モノ傾向が強い。
スタイリッシュとは彼岸ぐらいの差がある。
一見して泥臭くも味がある、そーいう風なモノを目指しているだろうけれど。


熱血モノと言えば、某メーカーが浮かぶ事だろうけど、ではそこは変身ヒーローを描くか、
という問いは即答出来ることだろう。メタモルフォーゼで無ければならないという理は無い。
無いにしても日曜日朝ヒーロータイムは脈々と受け継がれている。それは普遍な勧善懲悪モノから脱皮した、
ライダーシリーズが奥様方に受け入れられて平成は変わったなと一部にオタク達に独白させるものだったとしてもだ。
熱いセリフ、燃えるシーン、泣き笑いという定石とも言える人間ドラマに冷めた人にも受け入れられる余地がある、
それが日本の土壌だと信じるほか無い。


ゾーニングされたこの約束の地である、X-RATEDゲームでは、
戦うヒロインが犯れちゃうという形式美から逃れられない運命であり、
シャッテンでも類を漏れないので処女厨諸君らにはまったく薦められないので注意して頂きたい。
そんなわけで、このシャッテンも熱いヒーローモノだと一言で片付けられる様で、簡単にはいってくれなかった。
明確な敵がいて、仲間がいて裏切って裏切れたり、また寄りが戻ったりは勿論するけれども、目が届く範囲で円満ではいられない。
ヒロインとしてのシナリオはメイン優遇体制であり、
それぞれのサブキャラを丁寧に扱ってくれるという幻想はぶち殺されるので注意が必要だ。
キザイアが受け入れられない様であれば、このゲームを選択するという行為はやめた方がいい。
決して万人を救える主人公ではない、手に届く所すら手が届かずに悔やむ。
それでも自分は自分だからそれでいいじゃないかと不自然の定義をダブルスタンダードにならずに貫き通す。
装飾過多、演出華美なこの作品でそれが芯に残るこの主人公のかっこよさだと言える。


シナリオの妙としての集合無意識という仕掛けが出てくる。
心理学上の使われ方で無く、SFのハイブマインドに近い様に感じる。
その接地面に対して、ヒーローとしての個は、個人と個を超越しうる存在となりえるのかという命題が飛び出す。
平然と語られる解説される展開に、驚嘆した。異色の中の異色作であろう。
■ グラフィック ■
三年三ヶ月ぶり川原誠氏が登場。長いこと作品のリリースが無かったけれどもやっぱりこの方は描ける人だ。
この手のゲームにとっての棘がある絵を描けていて気持ちがよかった。
メーカーはナイスなチョイスだと言わざる得ない。
OPムービーもアップテンポな曲調が青葉りんご様のコケティッシュ強調する様で、
躍動感溢れるムービーに仕上がっている。
Hシーンは、それぞれキャラ2枚以上はある。半脱ぎシステムで選択も可能だ。触手も勿論ある。
■ ヴォイス ■
かわしまりの様の口上に、悶える。主人公より決まっているキャラのキザイアを上手く乗りこなしていたと思う。
後は、特に。
■ サウンド ■
OP/カットインテーマは、OPが前述の様に青葉りんごさま。テーマが片桐烈火様。
■ システム ■
基本的システム。
オートセーブ機能、セーブの項目はほとんど使わない。
マルチサイトビジュアルシステムというのが搭載されている。
それは別段問題ないが、このシステム環境設定はもうちょっとなんとかならなかったのか。使い難い、且つ設定しても思った通りにならない。文章表示で瞬間表示にしても、文脈のアクセントで表示が止まったりするので、一文表示が終わったと思ってクリックすると、実はまだ表示が残っていたとかざらにあった。難ありだろう。

難易度、普通。条件不明の分岐があるので。
攻略時間、12時間。
■ 総評 ■
かつてこの手のヒーローなんていなければ平和の証明だと言っていた人もいたけれど、
フィクションとしてのヒーローのレゾンデトールは救いの体現である。虐げられる人々がいて成り立つ。
構造としての是非は知らない。ただ、そんな不条理な世界の表層で戦うモノ達の物語であるからには、
刮目すべきは雰囲気(ノリ)なのは言うまでも無い。
「パンツ↑じゃないから、恥ずかしくないだもん」である。ようするにお約束は世界を構築する理なのだ。
フィニッシュショットがキックである以上、一撃必殺に恥じない演出と衝撃に満足出来るか、
エックスキックがあるかどうかそこもポイントである。大丈夫あった。

漏れとしては、キザイア分のシナリオボリュームが他のキャラにもあれば、
及第点をつけられる出来だったと思う。あまりにもサブキャラの扱いが切ないので。

上記通りの作品であるからして、それ以外の事をこれに求めるのは酷であろう。
ただ、変わった作品なのは間違いない。最近の学園モノに飽きた変なゲームやりてぇなぁ、
その上でメタモルフォーゼに自分は美学を感じる事が出来るぜッという方に是非とも薦めたい作品である。
■ 72点 クラス B ■