ひこうき雲の向こう側
■ 短評 ■
好きの一言が言えなくて
■ シナリオ ■
非常に胸糞悪いシナリオだと思う。人が悪いとも言える。

とばっさり切ってしまえる序盤だし、中盤以降もルートによってはいえばそうであろう。
普段・・・でいえばまあこの展開であれば即売り確定の強演出であるが、
今回は後発、評価を見てプレイした側なので、何かが起こるのだろうと我慢した。
ここで思う、我慢しなければならないという所作について。

一言で表すと「カタルシスへの手順」なのだと単純に考えればわかる。
でも、自分が不快に思ったことについて表面的に我慢しなければ得られないモノって
そんなものに価値を見出せるのだろうか。

今作の内容に話を戻すが、
他人の恋愛を覗き、自分の恋愛価値観とのすり合わせに失敗したヒロインと
他諸々ヒロイン像巡る物語ではあるが、
その過程が強引さと嫌悪感を隠さないストーリーとなっている。
ライターは勝負してるなと素直に感嘆したものではあるが、どう考えても人が悪いシナリオである。
『かなり無理やりな不幸話』が根底にある物語であるからというのが理由になるが、
もう少し倫理観などのガイドラインにしたがってマイルドな作品も作れただろうが、
『確かに』それではこの作品の風味が損なわれる。
(普通の学園モノにしては)メインヒロインの過程と手順がイリーガルすぎるという嫌悪感。
この点だけでも解消できる力強い進行力を物語が持っていたか?
答えは「否」である。
では結論としてこの物語は「否」であるか、と問われればそれも「否」である。

巷で評価されている「美汐 瑛莉ルート」は確かに評価に値すると思った。
すべての元凶であるこのヒロインルートが何故評価されなくてはいけないのか。
それをずっと考えながらプレイしていた。
これも結論としてはこの問題のあるヒロインを例え愛せなくても
'一ヒロインの人生における終幕まで描くコトが少ないから'
という一点に尽きると思う。まあ珍しい、無いとは言わないけれど。

紆余曲折を経てやっと解決する恋とその発露。短評がすべて。
■ 総評 ■
恋愛はとかく山あり谷あり、乱高下するものであるが
恋愛ゲーはその一幕を切り取ったものが多い。
我々はすべて、言ってしまえばこの問題がある瑛莉と同じ視点にいる。
この点の難しいところは枚挙に暇がないが、100を飲み込んでそうじゃね?とすると、
先にあげた物語の嫌悪感の根底に触れることが出来ると思うんだ。

だとすると、我慢しなければ得られないモノの前提が異なってくる。

そもそも我々は傍観者なのだから。
でなくても昨今、読み手のストレスフリーへの渇望感というものはものすごいものを感じる。
小説投稿サイトなどを見るとまさに顕著、無論自分もではある。
物語への向き合い方を忘れた、忘れてた、もう思い出せないモノなのかもしれない。

よく言われる、「嫌ならみなければいい、俺は嫌な思いしていないし」という
至言があるけれど、現代これだけ読み手に優しくし、甘やかしてたツケを
お互い支払う時代がきてるよね、ということだけを言いたかったの漏れ。
■ 75点 クラス A ■