魔法使いの夜
■ 短評 ■
「品のない肉の匂いがする。これだから犬は嫌いなんだ/草十郎」今回のMAX地点。
■ シナリオ ■
延長線上に存在する作品群を睨みながら、照らし合わされる世界観。
クロスーオーバーが出来るというのは実に豊かな世界観を持っているコトだと漏れは思う。
その一点においても価値というものが見出せる。
またワクワク洋館……雑居はまぁひとまず置いといて設定という舞台において他と遜色ない出来だと思った。
テキストにおいても、過去作品よりはだいぶ癖も少なく、わりかしとっつき安い部類に入るだろう。
もう勘弁してくださいと裸足で逃げ出したくなるようなことは今回は無かった。
それがいいのか悪いのかはわからない。
ただし、きのこ節とも言われる言い回しは相変わらず存在し言葉の両義語みたいな解釈の仕方に素直に感嘆する。

物語としては、素直なボーイミーツガールとは呼べるシロモノではないけれど、
きのこが描いたらまぁこうなるよね。という所感でまとめることが出来る範疇。
けれど、遊園地のシーンなども最高に盛り上がっており、是非目にしてほしい。
またそんなキャラがいるのであれば、これはこうなるんでしょ?
という未来予知をユーザーにさせてくれる親切心も忘れてはならない。
異能力者の中にただ一人レベル0がいれば間違いなくそいつは……という話。
でもそれが面白みであるとも思う。

先にも触れているが他作品の登場人物というのは既に土台があり、
今回で言うとそれらの最過去にあたる作品であるからして、延長線である未来は確定している。
その制約がある中で登場人物達の未来に思いを馳せることが出来るかどうか。
それが出来るのであれば何も文句は無いのだが。
元々三部作だった「魔法使いの夜」という第一作部分であろう本作。
ボリューム的にはやや寂しいことになっている中、苦々しく思うがひとまず完結している。
もし未完結であったのであれば、諸手を上げて未完成を指摘し心の平穏を得ることもできようがそれもあたわず。

今回得点に反映された漏れが感じる魔法使いの夜における物語の不満点は三つ。
・ボーイミーツガールではあるが恋愛描写が皆無であること(下地部分で終わっていること
・他作品のキャラはまだ救いがあるが、今回新登場のキャラの掘り下げが薄く浮いている感じが否めない。
・二部三部(続編)があるならばあると言ってくれ。

つれつれ書くことは書いたが、やはり他では体験出来ない作品ではある。
その点においても面白いと感じることが出来るのだが、同時に惜しいなぁという感情を抱くのである。
■ グラフィック ■
ムービーなし。
キャラデ、こやまひろかず。演出、つくりものじ。
個人的には塗り神様と認識していたわけだけれど、青子のオパーイを顕在化させた功績をここに称えたい。
型月お得意の血統系魔女のキャラにセーターを着せるという神技を漏れは生涯忘れない。

そんな与太は置いといて、ワイドにも対応し演出が凄かった。これを正統進化と言うんだろうな。
路線的にはだいぶminoriに寄ってきている気はするが。
■ ヴォイス ■
無し。
■ サウンド ■
魔法使いの夜〜メインテーマ〜、First star他、珠玉のサウンド。
■ システム ■
基本的システム。


本編中、選択肢は無し。
外伝の「誰も寝たりしてはいいけれど、笑ってはならぬ」にのみ存在する。


難易度、易。
攻略時間、15時間。
■ 総評 ■
とても個人的なコトにはなるけれど、どうにも過去話というのは好きになれない。
などどいきなり梯子を外すことを良しとしているわけでも無い。
と言うのも、やはり確定した未来に勝るストーリーというのは、その線上の未来にしか存在しえない。
という持論を持っているから。そんな固有スキルは忘却したいところだが、
それを忘れるなんてとんでもないと毎回ポップアップが出る。故にZeroも楽しめていない。もはやのろい。

とてもおおざっぱに言うと橙子の失敗した物語で終わってしまっている。
擬態化した理由などが明らかになるわけだけれど、その詳細って別になぁと思うわけで。
負けた事実は未来に生きているわけだし、そこから一歩踏み込んだところまで描いて欲しかったなぁという所感。
とはいえ相変わらず相関図を書いてちゃんと誰かが説明してくれないと腑に落ちない部分もたくさんあり、
難儀だなぁと思うのです。
■ 74点 クラス B ■