マブラヴ
■ 短評 ■
一大叙事詩へ連なる王道ラブコメディ
■ シナリオ ■
『君が望む永遠(以下君のぞ)』の大ヒットで一気にブランド力を高め、
トップブランドの仲間入りを果たしたアージュの第4作。

当初は先述の『君のぞ』と同年の発売を予定していたが、延期が重なり、発売したのは2年後となってしまった。
(続編『オルタネイティヴ』の延期はすでにこの時に約束されていたのかもしれない……)
本作は現代世界を舞台とした学園ラブコメディ「EXTRA」編と、
そのパラレルワールドを舞台としたSF「UNLIMITED」編の二部構成となっている。
プレイ当初は「EXTRA」編しかプレイすることができず、
その後条件を満たすと、「UNLIMITED」が開放される仕組みだ。
これは両シナリオが不可逆なものなのになっているのでいたしかたない。
まずは「EXTRA」編を素直に楽しもう。「EXTRA」で攻略したヒロインは、
「UNLIMITED」でもヒロイン級の扱いとして登場し、
それぞれがきちんとパラレルワールドの世界観や人間観をサポートしてくれるので、
作品をより楽しむためには全ルートをプレイしておくことが必須。

とまぁ……長々と書いてきたが、
結局のところ「UNLIMITED」はあくまで『オルタネイティヴ』の導入編でしかない
(「UNLIMITED」単品でも楽しめるが、あくまで『マブラヴ』シリーズ全体を楽しむという点では)ので、
本作のクリア後すぐに『オルタネイティヴ』を楽しめる環境を整えておきたい。
じゃないと、いくらなんでも後味が悪すぎる。
シナリオは『君のぞ』の愛憎劇で「鬱ゲー」ライターの代表格となった鬼畜人タムー、
反重力生命マーらが担当。本作でもコミカルなシーンの軽妙さと鬱シーンの落差でプレイヤーの心を激しく揺さぶってくれる。
おまけというにはあまりにも作品中で大きなウエイトを占めているが、
本作には歴代のアージュ作品のヒロインたちが登場するので、『君がいた季節』は厳しいにしても、
『君のぞ』ぐらいはやっておいたほうが、よりこの作品を楽しむことができるはずだ。
■ グラフィック ■
原画・キャラクターデザインは本作からアージュ作品に参加するようになったBouが担当。
硬質でシャープなデザインは、ロボットやパイロットスーツが登場する本作によくマッチしていると思う。
あと、プレイウインドウがワイド画面になったのを見たのは本作が初めての気が……。
現在では一般的になったワイド画面、立ち絵キャラの増加の先駆け的作品にもなっている。
また、出色なのがOP をはじめとするムービーシーン。これは実力派アニメーターの代表格である、
吉成鋼の手によるもの。このムービーにJAMPROJECT の熱い歌詞が乗るのだから、反則と言わざるを得ない。
■ ヴォイス ■
主人公の白銀武を相庭剛志(保志総一朗・イベントシーンのみ)が、ヒロインの鑑純夏、
御剣冥夜をそれぞれ藤原理加、奥田秋が担当。また、50以上いるキャラクターがほぼ被りなしのため、
聞いていても飽きることはない。
主題歌は栗林みな実の『マブラヴ』。この曲は『オルタナティヴ』までやり終えてから聴くと、
純夏の想いに改めて気づかされる名曲になっている。
■ サウンド ■
とくになし
■ システム ■
エンジンは自社製の「rUGP」を採用。
プレイに関しては基本機能をひと通りカバーしているのでまったく問題なし。
エンジンとは関係ないが、回想をはじめとするおまけ要素が用意されていないので、
見たいシーン、聴きたいBGMがある際は、直前でのセーブが必須となってしまうので要注意。

ほとんど選択肢が必要ないので難易度は簡単。
攻略時間は約35時間程度。
■ 総評 ■
主要人物は幼馴染に転校生、お堅い眼鏡の委員長にロリ担当、
無口の不思議ちゃん、そして気のあう男友だち(『オルタナティヴ』では女体化しているが……)と、
テンプレともいうべきラインナップ。
そして、恋愛要素として『EXTRA』だけに言及すれば、
純夏と冥夜のメインヒロインふたりに関するストーリーもストレートなことこの上ない。
そして、『UNLIMITED』は、ある日、日常が非日常へシフトし、
その運命に翻弄されながらももがき続ける主人公という姿が描かれていく。
散々書いてきたが、
『オルタナティヴ』とセットで考えないと評価がしづらいのひと言に尽きる。
作品全体を踏まえた詳述は、そちらで行いたい。
■ 80点 クラス A ■