家族計画
■ 短評 ■
家族とは何か、そのひとつの答え
■ シナリオ ■
 シナリオは、D.O.の過去作品「加奈〜いもうと〜」「星空ぷらねっと」に続いて山田一氏が担当。過去2作品と同様に、今作の氏のシナリオも、軸に現実的なテーマを据えている様子。

 問題を抱えた他人同士が、互いの生活のための擬似家族から、本当の家族となっていくというストーリーで、オーソドックスなアドベンチャー形式。しかしよくある恋愛モノと違うのは、先輩後輩クラスメイトや幼馴染との学園恋愛でもなく、お世話になる家の女の子とのドキドキ同居恋愛でもなく、父母姉兄妹のなかで交わされる家庭を舞台とした家族ドラマである点が、他のゲームにはない独特の色を出している。

 中盤までは基本的にコメディメ主体で、これが家族計画の大きなウリのひとつである。終盤では各々の抱える問題を乗り越え、欠けていた絆を得る。まさにハートフルコメディのお手本だ。

 シナリオはヒロインでさほど分量にバラつきは無く、共通ルート含め、各ルートが全部アタリである。ただ、ますみん(30)ルートは若干印象が薄く、また青葉様ルートより先にプレイすると、(ちょっとだけど)ネタバレになる点で注意が必要。ますみんが一歩ほかのヒロインに譲る感があるのは、やはり年齢のせいなのか・・・。

 そんな中、準EDと青葉様EDは強く印象に残っている。高屋敷でも一歩引いた準の、他者を受け入れた瞬間。抽象的な表現ではなく、食という具体的な描写でよりダイレクトに伝わってくる。青葉様は言うまでも無いだろう。大事な人の存在があり、幸せになると覚悟したときの在り方の変化。これはもう孵化と言っていいだろう。分かっているのにギャップに惹かれる、だけどそれが良い。

 笑いと涙とヌクモリティの組成比の妙、なかなかこんなシナリオには出会えないと思わせる出来である。
■ グラフィック ■
 キャラデザ&原画は福永ユミ氏。持ち前の女性的なやわらかいタッチにより、暖かさがゲームの方向性と合っている。随所に入るシリアスなシーンでは緊迫感が削がれる面もあるが、総合的にはよい起用だと思う。巷で指摘されるアゴの鋭さも個人的には大好物。すっごい刺さるよ!!

 CG枚数は少なめ。OPムービーは、フィルムのようににくるくる回る部分を除いて特別な仕掛けがない中、OP曲との親和性の高さも相まってキャラクター一人一人が強く印象付けられる構成。

 絆箱では、無印でお目にかかれなかったサブキャラの立ち絵が追加されているが、福永氏の絵が安定しない特徴がモロに出てメインキャラとの統一感が壊れている。非常に残念。
■ ヴォイス ■
 無印はヴォイスなし、絆箱で新規にヴォイスが追加。キャストに違和感は無く、演技も十分に満足のいく出来。その中でも注目は寛役の比留間狂ノ介氏。感動的シーンの演技もさることながら、既知の外にいらっしゃるときの演技も期待を裏切らないものに仕上げている。

 あと、大人ぺー姉さん声での青葉様の罵倒は、M御用達な一品となっております。
■ サウンド ■
とくになし。
■ システム ■
 基本的システム。特に不満はないが、敢えて言うなら間違えて右クリックを押してメニューを出してしまった場合、左クリックでメニューを消すことになってテキストが送られてしまう点が気になるか。
 難易度は易。攻略時間30時間。
■ 総評 ■
 自分の中でこれを超える作品は未だ無し。絵に多少問題がある?CGが少ない?確かにそういった面でゲーム評価、得点付けの観点からは他のゲームに一歩譲るものがあるかもしれない。しかし、そういうものを超えた魅力を持っている。

 そんな物語を締めくくるED曲「phylosophy」、タイトルの「家族観」のとおり、まさにこのゲームを象徴する楽曲としてふさわしい名曲。特に準EDからの流れは、何度プレイしても涙腺崩壊モノ。

 今の世の中、ニュースでは老人の単身世帯の問題、乳幼児虐待といった話題をよく見かけるし、一人暮らしで家族とほとんど連絡すら取らない人だって沢山いるだろう。このゲームは、そんな私たちが忘れかけている家族/大切な人を思う気持ちを思い起こさせてくれる、現代人にとっての処方箋的ゲームではないだろうか。
■ -点 クラス - ■