車輪の国、悠久の少年少女
■ 短評 ■
なんだろうね。
■ シナリオ ■

「いわれたことしかできない人間を三流。いわれたことを上手にできる人間で、ようやく二流。・・・森田はいつになったら一流になるんだ?」と、とっつぁんの圧迫を受け続けながら進むストーリー、選択肢を選べず思考を確定ざせるリードと手法には理由があった。また、その精神的タフネスとバイタリティあふれる主人公像は、他ある萌えゲーとは本作は違うのだなと意識させるのには十分であった。と思った上を越えてシナリオが展開されたら、もう何も言えなくなる。「あんたもそう思うだろ?」という対象の理解をし、この世界での社会システムの在り方の設定が憎たらしく思えたらもはや、ライターの術中に嵌っているということなのだろう。最後のカタルシスは比類なきものである、そうした数少ない成功例であろう作品とも言える。

そういった戦略的シナリオもさることながら、メイン外のシナリオも見せ場が多い。キャラクターは例外なく問題を抱えており、そのアプローチの手段と解決策という解だけでも面白みがあり、且つそれぞれの関係を含めて家族愛や友情、恋愛に絡めて言及している。含蓄も富むが何よりすべてにおいて何かを応えようとする理由というものが素晴らしい。爽快と言ってもいい、ひたむきさだけでも物語の価値がある。そのような泥臭さの味というのもある、味わい深い作品である。

■ グラフィック ■

AB2の看板絵師、有葉キャラデザ。トモセの方が好きだとかは聞いていない。これはこれの良さがあるのだろう。少なくても目を引く力はある。車輪を意識したムービーも話題にこそならなかったが、アリだと思う。

■ ヴォイス ■
とっつぁんなしには語れない本作、若本キャラだけのパワーで押し切った節も強い。あれは反則だろう。神埼プロの打ち筋……それは別な話か、ともかく舌たらずなキャラに多くのユーザーが「ぶっこおすぞ」にときめいた。また鷹月などのほかのキャストもなかなか破壊力がある、パワーがあるキャスティングであった。
■ サウンド ■
とくになし
■ システム ■

基本的システムADV。

左から右に流れるプロローグの演出は記憶に残る。あの掴みとシナリオの出だしは、稀に見る引き込み方、引き込む力があった。

■ 総評 ■

その物語の肝が話題になった。いわゆる叙述トリックというものがほとんどのユーザーには斬新かつ新鮮なものであった。そーいう仕掛けを行った作品と言えば、打越鋼太郎のインフィニティシリーズでもあったが、それから更に踏み込み、序盤から意味がある布石というのが明確に新しかった。また事前の情報でそれらに一切触れず、購入した誰もがそんなことは期待していなかった為でもある。

そうして、また新しい名物ライターが生まれ、持て囃され、あのメーカーは大きくなっている途中である。新興の力は凄まじい。しかし、その新しい威力はユーザーとしても期待が出来るだけに、これからも話題になり、追うことになるのであろう。

■ 85点 クラス S ■