神聖にして侵すべからず
■ 短評 ■
10th anniversaryにふさわしい作品だった。
確かに内部としてはクリエーターなどの異動はあったが、メーカーが作品に反映させる独自色は色褪せていない。
■ シナリオ ■
ヒロインルートは4つ。
ボリューム的どうかという問題は付きまとうものではあるけれど、作品の品質に支障はない。
クリアをするとアフターという項目が生まれ各ヒロインのアフターが見れる。
分けることに何の意味があるの?と思う。思うが一度リセットして仕切りなおしたかったのだろうか。
最近お約束になりがちなアフターにHシーンを導入するということもなく、まったり終わる。
どのアフターでも最高に幸せそうなヒロインというものが垣間見れる。

この4人のヒロインのチョイスがプレイ後までなんでこうしたのかと思っていた。
というか、操が他の三人と比べて設定で力負けしている。それも明らかに。
三番手に攻略し攻略するまでも同印象であったが、
終わってみると、このいらん子ヒロインは、丸谷が実に好きそうなキャラでエンディングのしまりがとてもいい。
という王国に必要な流れであったことがよくわかり、なるほどなぁと思った。
瑠波シナリオはメインのメインなので優遇されっぷりはいつもの如く。メインディッシュにして欲しい。

では、問題の希シナリオ。
イカレてた。
ぶん投げたのかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。
まじめにこれ作ったと考えると、感嘆すべき何ががあるだろう。
特筆すべき点は多々あるのだけれども、すべてはエンディングだ。
ヒロインが虫好き設定なのはわかるけれど、
家で飼っていたアシダカさん(蜘蛛)との別れを情感たっぷりに描いた。
虫である、作中も勿論一言もしゃべらない。
希とアシダカさんの仲良さというのは言及されてはいるけれど、
最後の最後で虫との別れ描写するエロゲというものを見て、なんとも言えなくなった。
■ グラフィック ■
OPムービーは、出だしが、海面からパンで空・鳥という構図。
こう書けば連戦練磨のエロゲーマーなら「あぁ」という感じにはなるだろう。
そんな漏れも、「あぁ」と思う。その後は続かない。

ゆのはな、かにしのとサブをやってきた仁之丞をキャラデザメインで投入。
系譜は守られた感はあるけれど、これからはどうするんだ?という疑問もある。

Hシーンは、各キャラ2回ずつ。
キャラデザの良し悪しやキャラの特性としては使用に絶えうることを想定していないだろうなぁと思ったけれど、
いつもの丸谷だったので、正せばいつものPUULTOPであったといえる。
■ ヴォイス ■
ことこの作品に限って言えば声優さんの面白みというのは漏れにはあまりない。
けれど、サブとヒロインのキャストを入れ替えたとしたらいつもの形になるのだろうから、
まぁそれでもいいかとも思う。フリーな立ち位置のゆかりキャラは言うまでも良いモノである。

あと、だいちゅうがあまり好きではないのだけどやっぱりうまい。
■ サウンド ■
OPよりもEDの荘厳さというか、良いエンディングテーマである。
■ システム ■
基本的システム。

選択肢が珍しく頭を捻るモノだった。
そもそも、選択肢が形骸化されて久しいこのギャルゲ・エロゲー業界において、
ヒロインを選択肢したという結果だけが選択され、主人公の行動を左右云々というところからは遠く離れた。
そうした二元論だけではないセンチメンタル部分で遊びたい欲求が漏れにはまだある。
というくだりは置いといて、選択肢は少ないけれどキャラによって突然フラグが確定してしまったり、
途中まで保留されたり、追加選択肢で決定とか、最近あまり見ないタイプである。

ルート推奨は、瑠波を最後に回せばうまくヲチがつく。

2011/11/30まで全プレの応募権利が初回ロットにはあるので忘れないように。

攻略時間、14時間。
難易度、易。
■ 総評 ■
かにしのから5年も経過したか。そろそろ健速の呪縛から解き放たれたかなぁと思う。
あの作品は勝手に健速が好きなだけ暴れて駆け抜けていったようなものなので、
面白い作品ではあったけれど、ノーカンと叫ぶチョーさんが漏れの頭に浮かぶ。

そのようなことにどのくらいの意味があるのかはわからないけれど、
PULLTOP10周年の中でいろいろあった作品の中でも重きを置くユーザーも多いことからも、その人気は伺える。

そして、SEVEN WONDERへ袂を分かち丸谷がこれからもPULLTOPで書き続けるかはわからないけれど、
このような作品を作り続けていくというメッセージを確かに漏れは受け取ったので、
それで良しとしておきたいところではある。

―――王国は確かにここにある。
■ 75点 クラス A ■