そして明日の世界より―
■ 短評 ■
エロ助POV、「死生観」で一位のライター、健速が贈る、
残り3ヶ月という世界の2週間を切り取った、小さな世界の大きな変動を描く青春群像劇。
■ シナリオ ■
主題として、主人公と周りの人たちの在り方に共感出来るかどうか。

煩雑極まりないこの世界の隅で、
終わりを告げた世界で葛藤しそれでも自分らしく生きるという姿勢を見せる主人公。
それを取り成す好意を寄せるキャラクター陣。
親密な人間関係を取り持つ「島」世界であるから出来た事なのだろうか。
外界でもそれをみせることが出来たか?
賛美出来る範囲での世界の崩壊だから成し得たのではなかろうか。

スローライフという言葉が頭に過ぎる、素敵な世界観。
それに反してのヘビーな出来事、明暗がくっきりとした作品でした。
知る事による時の残酷さ、もしまったく猶予の無い状態だったら。
いろんな事が考えられる作品でした。

作中の野球描写について少々。
ナックラーたる青葉様の、男女間の埋めについてはなるほどという、とても良い線をついてる。
如何に握れる才能があったとしても、放れたとしても最大の問題はコントロール。
劇中描写にある人一倍努力する姿が目に浮かびちょっとホロリ。
対照的なのは、水守のマルチっぷり、ロボじゃないよ。
体は弱いが、アンダースローでその差を埋めようとするのは、もはや女子野球の伝統芸。
さぞかし綺麗なサブマリンなんでしょう、とまたホロリ。
■ グラフィック ■
久しぶりの植田亮氏。
キャラデザもいいけど、今作凄く背景がいいね。
特に空の背景が凄く綺麗で実物がそこにある感が漂っていました。

OP、EDムービー、神月社氏。繊細に描かれてました。
■ ヴォイス ■
なかなか隙の無いキャスティングだと思います。
それはそうと、やけに一人うまいの参加してるなと思ったら・・・。青山さんじゃないほうね。
安玖深音さんをしっかり聞いたのは久しぶりだなぁ。毎回言ってる気がしないでもないけど。
■ サウンド ■
OP、川田まみさんですが、他にいろいろルート毎のEDなど、サウンド面でもしっかり力を入れてました。
BGMがイージーリスニングに耐えうる、良いものでした。
賛美歌のAmazing graceも漏れにとっては馴染み深い曲でしたし。
■ システム ■
基本的システム搭載。

システム環境などに特に問題は無かったと思うけど、エフェクトが重くてスキップ時に縞々が出ていました。
それほど気になるものではありませんが、それはパンツだけで十分です。
キャラクター4人ルート+通常END+After構成となっています。

難易度、易。
■ 総評 ■
何故80点以上が本作品に対して付けることが出来なかったか。

・青葉の後日ルートが最後の最後まであると信じて止まなかったから。消化不良。
・健速お得意の綺麗な起承転結であるにも関わらず、中だるみが物凄い。だれる、疲れる。

上記二点です。ただし、見ての通り100%自分由来の理由であるので、
他の人に適用されるとは微塵も思っていません。
物語の主題を紐解けば、ライターの描きたかったモノも感じる事が出来たし、
別段不満等もありませんが。如何せん最後の結末を目にするまでが重い。
ただ、作品の流れとしてはそれであっている、正しいとは思います。


埋没している綺麗なモノをどうして綺麗であろうか−と否定しておきながらも、
やっぱり、〜だから綺麗なんじゃね。
と魅せるいつもの健速の構成は、ラストに心地よい疲労と感動を与えてくれる作品に仕上がっています。
やはり力があるライターなんだと思います。
またそれに合わせて仕上がっている全体的な出来にも満足の行く、良作。

健速乙。
■ 78点 クラス A ■