【レビュー】ナルキッソス3|多視点で広がる“死”の物語、シリーズ最大の挑戦作

【レビュー】ナルキッソス3|多視点で広がる“死”の物語、シリーズ最大の挑戦作

■ 短評

3作目にして物語のスケールが一気に広がった。
どこまで行くのか──その果てを見たくなる一作。


■ シナリオ

本作は4つの短編+おまけで構成され、それぞれが異なる視点・異なる時代から
「死」と「孤独」を描き出す。
シリーズのテーマを多角的に掘り下げた、非常に挑戦的な構成。

● 死神の花嫁(Scenario: ごぉ)

初見ライターだったが、噂通りの実力。
4作品中唯一、選択肢によって回答の幅が広がる構成で、
医師視点から“死に寄り添う者”の苦悩を描く。
ラストの受け取り方は人によって大きく変わるはずで、
「自分は麻痺しているのか?」と考えさせられる余韻が残る。

● -Ci- シーラスの高さへ(Scenario: 酸橙ひびき)

チサトの「・・・それじゃあ、死んでくる」「・・・ばいばい」。
この瞬間に“書ける人だ”と確信した。
アンバークオーツのライターでもあるらしいが、
本作では最も“綺麗な物語”を描き切っている。
会話のテンポが良く、第三者視点の構成も秀逸。
今後注目したいライター。

● メサイア(Scenario: 早狩武志)

異色・異才という言葉が似合う挑戦作。
プロローグからの伏線、仕掛け、そして“問いかけ”の強度が圧倒的。
「人はどのタイミングでも死ねる」──
それを力技で証明する構成は賛否両論だが、
やらなければ嘘になる、という強い意志を感じる。
救われたのは誰だったのか。
入院患者+医者のマルチサイト視点が光る。

● 小さなイリス(Scenario: 片岡とも)

「どうしてあの人は最後に笑ってみせたのだろう」
──これぞナルキッソス。
“銀色っぽい”という感想も納得の、片岡節全開の物語。
どの時代にも存在する“抗えない流れ”と、
それでも変わらない人の本質を静かに描く。
西洋舞台の雰囲気も良い。

● おまけ:姫子エピローグ

既読感があると思ったら、前書きされていたもの。
シリーズの補完としては嬉しい内容。

時間軸は以下の通り:
イリス → 1st → 死神の花嫁 → メサイア → 姫子エピローグ → 2nd → シーラスの高さへ


■ グラフィック

ムービーが本編に挿入できなかったという片岡節が炸裂。
せっかく良いムービーなのに、組み直して入れてほしいレベル。

緒方の絵は相変わらず“ばーにんぐ”。
同人っぽさ全開で、ある意味泣ける。
特に「死神の花嫁」「メサイア」はキャラの崩れが激しいが、
「小さなイリス」では本気を出しており、
“描く時は描く”緒方の本領が見える。


■ ヴォイス

謎キャストはいつものことだが、後藤麻衣の存在感は強い。
平井理子は安定の演技で、キャラとのマッチングが良い。


■ サウンド

豪華スタッフ陣が参加しており、音楽面の満足度は高い。


■ システム

基本システム搭載。
「死神の花嫁」以外は選択肢なしの一本道。
3rdクリア後におまけへ進める。
完結編の予定もあるらしい。
4コマは相変わらず緊張感ゼロ。


■ 総評

人は皆、同じだけ孤独で、同じように死に至る。
覆せない事象だからこそ、物語として“どう見せるか”に意味がある。
答えのない物語でも、そこから何かを見出せるなら、それが自分の答え。

「死神の花嫁」で医者の苦悩を描き、
「メサイア」でその苦悩を“傲慢だろうが言い切る”強さで対極を示す。
この対比が非常に良い。

片岡ともは遠い時代を描き、他ライターは現代を描く──
この構造も面白い試み。
特に「シーラス」は素晴らしかった。

■ 85点 クラスS