【レビュー】つくとり|“人間が一番怖い”を真正面から描く、久々に刺さるサスペンスADV

【レビュー】つくとり|“人間が一番怖い”を真正面から描く、久々に刺さるサスペンスADV

■ 短評|霊でも神でもなく、一番怖いのは“人間”だと再確認させられる

この世で一番怖い存在は、霊でも神でも超常でもない──人間
笑い抜きで、久々に「面白い」と素直に言えるゲームだった。


■ シナリオ|雪深い山村で起こる惨劇。選択肢なし・三分岐・全BADからの“解”へ

舞台は雪深い山村。
土着信仰の神“~様”はいるが、○だッ!と言う少女も、口先の魔術師も出てこない。
オマージュではなく完全に別作品だが、踏まえて読むと「あぁ、なるほど」と思う部分はある。

● 選択肢ゼロ、だが三つの分岐が存在

選択肢は一切ないが、物語は三つに分岐し、それぞれがBAD END
その三つの問題点を論じた後、すべての“解”が示され、
メインヒロインのエンディングルートへ帰結する構造。

● 序盤の辛さを越えると一気に引き込まれる

序盤は相変わらず辛いライターだなと思っていたが、
気づけば「誰が犯人か」というサスペンスに引き込まれていた。

三分岐はヒロインルートだが、ヒロインの魅力よりも視点の面白さが際立つ。
「あー、そっちにつくとこう見えるのね」という構造が楽しい。

大層なトリックがあるわけではなく、
ミスリードによる主人公の行動というよりは、
怪しすぎる村人たちの行動を主人公視点で見ていくタイプ。
「なんでだろう?」と思うほど、物語に勢いがつく。

● 解は“犯人当て”ではなく、人物背景とリスタート

解は推理物の答えというより、
人物像の背景や、前編を受けての“再出発”に近い。

● 最後の最後で「ねーよwww」となるヲチ

突飛なヲチがないと言えば嘘になるが、
それはエンディングルートに一つだけ。
しかもミスリードとしては分かりやすいので、気づかない人はいないはず。

ただ、最後の最後で「ねーよwww」と言わせるとは思わなかった。
もっと頻繁にその要素を使っていれば「やっぱりね」で済んだのに、
そこだけが惜しい。叙述トリックと呼ぶには弱い。

● 本質は“人間模様”と“社会風刺”

サスペンス色は強いが、核心は人間関係・人間模様
毒の強い社会風刺を描くのが上手いライターなので、そこに注目してほしい。

読み解くカタルシスは薄いが、
「やっぱりなぁ」より「なるほどなぁ」という納得感がある。


■ グラフィック|“あの魔術師帽子の子が出てきそう”な雰囲気。絵師に恵まれた

どこか某ワイヤー使いの魔術師少女が出てきそうな絵柄。
とにかく絵師に恵まれた作品で、ビジュアル面は強い。


■ ヴォイス|ピカリンが光る。女性陣は高レベルだが、愛☆美奈子だけ正体不明

ピカリンが文字通り光っている。
女性声優陣は全体的にレベルが高い。

ただし「愛☆美奈子」だけ誰なのかわからない
誰かこっそり教えてほしい。

フルボイスでないのが惜しい。男性にも声が欲しかった。


■ サウンド|もっと“おどろおどろしい”曲が欲しかった

耳に残るホラー系の曲がもう少しあれば良かった。
特筆すべき点はなし。


■ システム|選択肢ゼロなのにクイックセーブがある謎。バグはなし

基本システムは問題なし。
ただし選択肢がないのにクイックセーブ&ロードがある意味は不明。

バグやスクリプトミスはなく、安定している。


■ 総評|買わない理由がない。久々に“良い買い物をした”と思わせる一作

脚本・絵師・声優・内容──どれをとっても買わない理由がない。
久々に「良い買い物をした」と思わせてくれた。

ゲーム性の都合上、多くを語れないのがもどかしいが、
丸戸氏の言う「エロゲー黎明期の探偵モノADV」に近い。
土壌は違うが、どこか懐かしい匂いがする。

ロケッツは喫茶系まったりシナリオより、
こういう毒のあるサスペンスの方が絶対合っている。
今回も勢いがあり、大味ながら十分楽しめた。

最後に一つ。
処女厨は買わない方がいい。
久々にこの手をやって「この世の女キャラは処女しかいない」と勘違いしていた
自分の中の処女厨乙(‘A`)乙

■ 80点(クラスA)