【レビュー】WHITE ALBUM -綴られる冬の想い出-|12年越しでも胃が痛い。だが新ルートが作品を救ったPS3版
■ 短評|『ずっと前から仕組まれてた、そんな出会いって、信じる?』
アニメ第2話のサブタイトルを引用したくなるほど、
運命めいた出会いとすれ違いが胸を締めつける。
12年経っても胃が痛くなる作品だが、PS3版の新ルートが見事に息を吹き返させている。
■ シナリオ|小夜子ルートが“現代的な救い”として輝く
元々ホワイトアルバムは、当時から決して評判が良い作品ではなかった。
浮気・すれ違い・自己嫌悪──胃にくる展開の連続で、今プレイしてもやっぱり胃が痛い。
● 新キャラ「小夜子ルート」が圧倒的に良い
PS3版最大の功績は小夜子ルート。
古臭さの残る本編に、近年のテイストが絶妙にマッチしている。
- 奔放さが“可愛い”に収まるキャラ性
- 弱さを丁寧に描き、主人公に寄りかかる構図
- アイドルでありながら干されかけという設定が距離感を縮める
本編の“どうしてこうなった”系の浮気劇から浮いた存在でありながら、
Leafが本筋をいじらずに新ルートを成立させた潔さが光る。
読後感も良く、まるで丸戸史明っぽいテイストを感じるほど。
誰が書いたにせよ、これは良いものだと言い切れる。
● 既存キャラは相変わらず胃が痛い
由綺以外はほぼバッドルートと思って挑むのが健康的。
特に弥生ルートは読後感が最悪なのに、なぜか嫌いになれない不思議な魅力がある。
PC版で弱かった濡れ場描写も、PS3版ではCGとシチュエーションの工夫で
弥生ルートは「唖然とするがエロい」レベルに仕上がっている。
はるかは本当に良い女なのに、報われないのがまた辛い。
最後に由綺をプレイすると綺麗に締まるのでおすすめ。
■ グラフィック|CERO Dの限界に挑んだが、ムービー2本は寂しい
18禁版からの移植だが、CEROとSONYチェックの狭間でどこまで攻められるか──
結果はCERO D。
最も露出が高いのは由綺のベッドシーンだが、エロさでは弥生が圧勝。
カワタヒサシの絵はほぼ描き直し+一部追加。
「昔の方が良い」「今の方が良い」は好みだが、
個人的には“ちゃん様じゃなければ誰でも同じ”派なのでどちらでも良い。
● ムービーが2本しかないのは残念
PS3でHDなのに、ムービーはリハシーンとライブの2本だけ。
音楽祭をフルアニメにしても誰も怒らないのに、なぜやらなかったのか。
■ ヴォイス|キャスティングは豪華だが、しっくりこない部分も
平野綾と水樹奈々の配役は、発表当時から「逆の方が良くない?」と思っていた。
設定的には理解できるが、キャラ的にはしっくりこない。
ぱくろみは安定の職人芸。
佐藤利奈は新キャラの慟哭シーンで圧倒的な存在感を見せる。
■ サウンド|懐かしさと新しさが同居。suaraのEDが沁みる
懐かしい楽曲群に、suaraが歌い直したEDが加わり、
“あぁ社長だなぁ”とわかるBGMが作品を支える。
■ システム|PS3のセーブ周りがストレス。MPは良いが劇的ではない
基本システムは問題ないが、フリーズが発生するのが厄介。
特に小夜子ルートで起こりやすい。
● PS3のセーブ&ロードがとにかく使いづらい
PS3のOS上でセーブする仕様のため、
縦一列のセーブデータを管理するのが非常にストレス。
クイックもオートもないのは痛い。
さらにシステムデータがコピー禁止という謎仕様。
ユーザビリティもアクセシビリティも低い。
● モーションポートレート(MP)
立ち絵がぬるぬる動く。胸も揺れる。肩もすくむ。
minori系の動きから、アニメ寄りに発展した感じだが、
劇的ではなく、絵の湾曲が不自然に見える場面もある。
とはいえ、無いよりは遥かに良い。
難易度:難(コンプ前提)
攻略時間:23時間
■ 総評|PS3で作る必要性は薄いが、12年越しの価値はある
PS3で作る必要があったかと言われると微妙。
HD画質やMPは確かに魅力だが、決定的な理由には弱い。
しかし、12年という歳月が作品を変質させ、
今のプレイヤーが触れても十分楽しめる内容になっている。
Leafの“時代を切り開いてきたメーカー”としての矜持を感じる部分もあり、
儲としては応援したくなる。
Routesのアニメ化、コミパ2の制作──
そんな未来を願いたくなる一本。
■ 75点(クラスA)