【レビュー】古色迷宮輪舞曲 ~HISTOIRE DE DESTIN~|“良く出来ている”を真正面から体現した、鋭角なループADV
■ 短評|美味しい紅茶の淹れ方を覚えるゲーム(本当に)
一言でまとめるなら「良く出来ている」。
そして本作の目的は、言うまでもなく美味しい紅茶を淹れられるようになることである。
……いや、冗談ではなく本当にそういうゲームデザインなのが面白い。
■ シナリオ & システム|“無かったことにする”ループ構造と、誘導型の高難度ADV
ループものは本来、起こった致命的事象を回避し、より良い未来へ向かうための試行錯誤が醍醐味。
名作と呼ばれる作品群も、そこを軸に構築されている。
しかし本作は違う。
致命的な事柄を「無かったことにする」という、かなり特殊なアプローチを採用している。
絡まった糸を一本ずつ解くような作業で、しかも失敗したら死ぬ。
巻き戻しがあるとはいえ、これは相当にストレスフルだ。
● 主人公の“誘導”がゲーム性の核
プレイヤーは何が起きているのか分からないまま、主人公の限られた思考を誘導していく。
だが、「お前が覚えてなくてどうする」という展開や、
「それ聞くの?」という嫌がらせに近いハードルが容赦なく襲ってくる。
メーカーの「それがいいんだろ?感じてるんだろ?」という声が透けて見えるようで、
びくんびくん……となるのは時間の問題。悔しくなんかない。
● すべてを解き放った後の“ご褒美”
くびきを抜き去り、全てを無かったことにした後には、
会話コマンド形式の終わらないお茶会が待っている。
この“時代を感じる”演出が妙に心地よい。
攻略時間:30時間
難易度:難
久々に歯ごたえのあるADVで、メーカーがユーザーに挑んでくる姿勢が嬉しい。
■ グラフィック|お茶を飲んでいる印象しかない(褒めてる)
とにかくお茶。お茶。お茶。
Hシーンは申し訳程度で、もっと組み込めたのではと思うが、
作品の方向性を考えるとこれはこれでアリ。
■ ヴォイス|雪村とあの舞役がドンピシャ
雪村とあの舞役は完全にハマり役。
その他のキャストも安定しており、浮いているキャスティングがないのは嬉しい。
ただ、怖いもの見たさで“浮いたキャスト”も見てみたい気持ちはある。
■ サウンド|Angel Note、特筆なし
音楽は必要十分。
特に強い印象は残らないが、雰囲気作りにはしっかり貢献している。
■ 総評|“紅茶を淹れられないと進めない”ギミックを物語に結びつけた妙案
紅茶を淹れられないと進めない──
つまりプレイヤー自身が覚えないといけない。
このギミックを最後のオチに強引に(しかし見事に)結びつけたのは妙案。
メーカーが掲げた「クリアできるものならしてみろ」という挑戦的な姿勢は、
近年では珍しいほど鋭角。
選択肢総当たりでも突破できない難易度は伊達ではない。
正答率1%の惨劇に挑んだプレイヤーも多いだろうが、
自分の中で問題を捉え、考え、乗り越えるという原初の快感がある。
ループ・ミステリー・世界観の違いはあれど、
続きが気になるという一点を満たしている時点で、この作品は成功している。
たとえ結末が完全無欠のハッピーエンドでなくても。
■ 80点(クラスA)