【レビュー】WIZ ANNIVERSARY ウィズ☆アニバーサリィー|“4ルートは良作、3ルートは異常”という極端な落差が惜しいファンタジーADV

【レビュー】WIZ ANNIVERSARY ウィズ☆アニバーサリィー|“4ルートは良作、3ルートは異常”という極端な落差が惜しいファンタジーADV

■ 短評|4ルートは健全で良作、3ルートが完全に邪魔をする惜しい作品

全7ルート中、4ルートはしっかり面白い。
だが残り3ルートがあまりにも異常で、作品全体の評価を引きずり下ろしてしまう。
この3つさえ無ければ、間違いなく良作だった。


■ シナリオ|ファンタジーとしての世界観は良いが、テキストとキャラ設定が足を引っ張る

まず、問題はシナリオそのものよりテキストのノリ
ぐだぐだした展開、キャラのうざさ、テンションの相違──序盤3時間は拷問に近い。

ただし、以下の2ルートに入れば一気に安定する:

  • (シャル、エンフィ)ルート:エルフ娘ツンデレルート
  • (ローラ、ソフィア)ルート:おっぱいルート

逆に以下の3ルートは覚悟が必要:

  • (アリス、グラニデ、ディアナ)ルート:炉。死ぬ気で挑むべし。

● 主人公は「神々の黄昏」の持ち主

北欧神話をベースにした設定は悪くない。
「約束された勝利の剣」をここまで明確に使う作品は珍しく、
FA(ファンタジーアドベンチャー)としての構築はしっかりしている。

世界観の考察も丁寧で、最近では珍しいほど“ちゃんとした西洋ファンタジー”。
物語の破綻はない……が、例の3ルートが破綻している

● 主人公の謎を解くルートが“破綻ルート側”にある問題

最も美味しい主人公の核心に触れるルートが、
よりによって破綻側の3ルートに配置されているのが致命的。
しかも結末がいらない方向に転ぶ。

● ローラ・ソフィアルートの“奇跡”の解釈が謎

世界の理から外れて因子が崩壊→再構成という展開は、
誰か説明してくれと言いたくなるレベルで唐突。

● シャル・エンフィルートは完璧

文句なしの出来。
このルートだけなら80点は固かった

● サブキャラも優秀

リオルは観測者として機能し、オマージュネタも上手い。
ただし、この物語最大の謎はエンフィの果物
あれは何だったのか。


■ グラフィック|キャラデザは“神”。背景・演出も安定の高品質

キャラデザはまさにゴッド。
背景も良く、OPムービーも悪くない。
画面効果も丁寧で、人を選ばないクオリティ。


■ ヴォイス|全体的に良好

声優陣は安定しており、特に問題なし。
キャラの魅力をしっかり支えている。


■ サウンド|無難。だがSEの「キュイーン」が危険

OP・EDともに無難。
BGMも特筆なし。

ただしSEの「キュイーン」は、
パトランプが光ったのかと錯覚する危険な音。
ホールが呼んでいる気がしてしまう人は要注意。


■ システム|基本は良好。スキップが速いのは高評価

基本システム搭載。
スキップが速くて快適。
パッチ(ver1.1)は必ず当てるべし。

難易度:普通
フラグ管理:よくわからない


■ 総評|名作になり損ねた惜しい作品。エンフィはガチ

名作になり損ねた。
とにかくあの3ルートが邪魔
茶々を入れすぎ、話の腰を折りすぎ。

姉、氏ねじゃなくて死ねよと叫びたくなる瞬間もある。

ただし、エンフィはガチ。
そこだけは揺るがない。

■ 72点(クラスB)

【レビュー】WHITE ALBUM -綴られる冬の想い出-|12年越しでも胃が痛い。だが新ルートが作品を救ったPS3版

【レビュー】WHITE ALBUM -綴られる冬の想い出-|12年越しでも胃が痛い。だが新ルートが作品を救ったPS3版

■ 短評|『ずっと前から仕組まれてた、そんな出会いって、信じる?』

アニメ第2話のサブタイトルを引用したくなるほど、
運命めいた出会いとすれ違いが胸を締めつける。
12年経っても胃が痛くなる作品だが、PS3版の新ルートが見事に息を吹き返させている。


■ シナリオ|小夜子ルートが“現代的な救い”として輝く

元々ホワイトアルバムは、当時から決して評判が良い作品ではなかった。
浮気・すれ違い・自己嫌悪──胃にくる展開の連続で、今プレイしてもやっぱり胃が痛い。

● 新キャラ「小夜子ルート」が圧倒的に良い

PS3版最大の功績は小夜子ルート
古臭さの残る本編に、近年のテイストが絶妙にマッチしている。

  • 奔放さが“可愛い”に収まるキャラ性
  • 弱さを丁寧に描き、主人公に寄りかかる構図
  • アイドルでありながら干されかけという設定が距離感を縮める

本編の“どうしてこうなった”系の浮気劇から浮いた存在でありながら、
Leafが本筋をいじらずに新ルートを成立させた潔さが光る。

読後感も良く、まるで丸戸史明っぽいテイストを感じるほど。
誰が書いたにせよ、これは良いものだと言い切れる。

● 既存キャラは相変わらず胃が痛い

由綺以外はほぼバッドルートと思って挑むのが健康的。
特に弥生ルートは読後感が最悪なのに、なぜか嫌いになれない不思議な魅力がある。

PC版で弱かった濡れ場描写も、PS3版ではCGとシチュエーションの工夫で
弥生ルートは「唖然とするがエロい」レベルに仕上がっている。

はるかは本当に良い女なのに、報われないのがまた辛い。

最後に由綺をプレイすると綺麗に締まるのでおすすめ。


■ グラフィック|CERO Dの限界に挑んだが、ムービー2本は寂しい

18禁版からの移植だが、CEROとSONYチェックの狭間でどこまで攻められるか──
結果はCERO D
最も露出が高いのは由綺のベッドシーンだが、エロさでは弥生が圧勝。

カワタヒサシの絵はほぼ描き直し+一部追加。
「昔の方が良い」「今の方が良い」は好みだが、
個人的には“ちゃん様じゃなければ誰でも同じ”派なのでどちらでも良い。

● ムービーが2本しかないのは残念

PS3でHDなのに、ムービーはリハシーンとライブの2本だけ。
音楽祭をフルアニメにしても誰も怒らないのに、なぜやらなかったのか。


■ ヴォイス|キャスティングは豪華だが、しっくりこない部分も

平野綾と水樹奈々の配役は、発表当時から「逆の方が良くない?」と思っていた。
設定的には理解できるが、キャラ的にはしっくりこない。

ぱくろみは安定の職人芸。
佐藤利奈は新キャラの慟哭シーンで圧倒的な存在感を見せる。


■ サウンド|懐かしさと新しさが同居。suaraのEDが沁みる

懐かしい楽曲群に、suaraが歌い直したEDが加わり、
“あぁ社長だなぁ”とわかるBGMが作品を支える。


■ システム|PS3のセーブ周りがストレス。MPは良いが劇的ではない

基本システムは問題ないが、フリーズが発生するのが厄介。
特に小夜子ルートで起こりやすい。

● PS3のセーブ&ロードがとにかく使いづらい

PS3のOS上でセーブする仕様のため、
縦一列のセーブデータを管理するのが非常にストレス。
クイックもオートもないのは痛い。

さらにシステムデータがコピー禁止という謎仕様。
ユーザビリティもアクセシビリティも低い。

● モーションポートレート(MP)

立ち絵がぬるぬる動く。胸も揺れる。肩もすくむ。
minori系の動きから、アニメ寄りに発展した感じだが、
劇的ではなく、絵の湾曲が不自然に見える場面もある。

とはいえ、無いよりは遥かに良い。

難易度:難(コンプ前提)
攻略時間:23時間


■ 総評|PS3で作る必要性は薄いが、12年越しの価値はある

PS3で作る必要があったかと言われると微妙。
HD画質やMPは確かに魅力だが、決定的な理由には弱い。

しかし、12年という歳月が作品を変質させ、
今のプレイヤーが触れても十分楽しめる内容になっている。

Leafの“時代を切り開いてきたメーカー”としての矜持を感じる部分もあり、
儲としては応援したくなる。

Routesのアニメ化、コミパ2の制作──
そんな未来を願いたくなる一本。

■ 75点(クラスA)

【レビュー】WIZARD GIRL AMBITIOUS|“美少女魔道師”という記号が90年代で完結していたことを思い出させる作品

【レビュー】WIZARD GIRL AMBITIOUS|“美少女魔道師”という記号が90年代で完結していたことを思い出させる作品

■ 短評|美少女魔道師のイマを見た

ファンタジーADVとしては軽め、しかし妙に懐かしい。
美少女魔道師というジャンルが、すでに90年代で完成していたことを再確認させられる一本。


■ Q&A|作品の雰囲気を端的に表す“雑だけど核心を突く”質疑応答

  • Q:似非ファンタジー?
    A:いいえ、ちゃんとファンタジーです。
  • Q:スレイヤーズ+ハルヒって聞いたけど?
    A:半分正解。
  • Q:ハルヒとみくるじゃね?
    A:そんなことないよ、絶対ないよ。
  • Q:エターナルフォースブリザードは?
    A:一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させる 相手は死ぬ。
  • Q:カオスワードがパクリ?
    A:そんなことはありません。「ワールドエンド」のカオスワードで死ぬかと思った。
  • Q:スライム触手は?
    A:あります。
  • Q:ハーフエルフいるのにハイエルフは?
    A:小一時間問いただしたい。
  • Q:一番衝撃だったのは?
    A:エルフの耳コキ。デカルチャー!
  • Q:面白い?
    A:たぶん。

■ グラフィック|複数原画でも調和が取れている安定感

OPは特になし。
EDは昔のアニメのような見せ方で、妙に味がある。

複数原画にもかかわらず調和が取れており、
キャラデザが売りの作品としては十分なクオリティ。
本編中も違和感なく、1キャラにつきHシーン2つという構成。


■ ヴォイス|木村あやかの“木村あやか感”が炸裂

キャストは良好。
ただし木村あやかは何を演じても木村あやか。
キャラではなく“木村あやか”が前に出てくるので、
考え始めると頭がどうにかなりそうになる。


■ サウンド|井上みゆのOPが印象的

OPは井上みゆ。
あべにゅー系の人だが、今回はそちら寄りではない歌い方で参加している。
その他は特筆なし。


■ システム|基本は揃うが謎仕様もあり

基本システムは問題なし。
パッチもリリース済み。

ただし、インストール画面の「デモムービー」ボタンが押しても反応しない。
公式曰く「意味はないけど仕様」。
……意味がわからない。

難易度:易
攻略時間:16時間


■ 総評|王道FTの“懐かしさ”はあるが、ルート構成が弱い

近年不足していたファンタジー分を満たすほどではないが、
「あぁ、FTやってるな」という気分にはなれる。

王道展開、ヒロインの秘密、倒してもまだいるボス──
馬鹿馬鹿しいが首尾一貫しており、そこは褒めたい。

ただし、共通ルートが長すぎて、
2周目以降は各ヒロインルートが薄味で物足りない。
決着が一つに収束する構造のため、道中の変化が乏しい。

正義の美少女魔道師という記号は、
もう90年代で完成していたと痛感させられる作品。

いろいろすまなかったと思っている──そんな気分になる一本。

■ 69点(クラスB)

【レビュー】Worlds and World’s end|“デザインと構成は良いのに物語が惜しい”をまたも体現した一本

【レビュー】Worlds and World’s end|“デザインと構成は良いのに物語が惜しい”をまたも体現した一本

■ 短評|前作同様、外側は良いのに物語が惜しいメーカーの典型例

ビジュアルや構成のセンスは確かにある。
だが、物語の核となる部分が弱く、今回も「惜しい」の一言に尽きる作品だった。


■ シナリオ|終末世界×分岐世界の設定は魅力的だが、核心が語られずカタルシスが弱い

物語は終末系。
ある出来事をきっかけに世界が分裂し、
“死んだ世界”と“元の世界”
“消えた人間”と“残った人間”
という二重構造で進む。

しかし、結末に至っても
「なぜ世界が分かれたのか」
という核心の解が提示されない。
不条理として処理されてしまい、カタルシスが霧散する。

● 三人の主人公がそれぞれの目的を追う構成

大人になりきれない若者たちが、
終わってしまった世界で助け合いながら進む。
世紀末覇者伝になってもおかしくない状況を、
自戒と模索で乗り越えていく姿は悪くない。

見せ場も理解している構成で、
「ここは押さえるよね」という演出はしっかりしている。

● 最終ルート:Worlds and World’s end

最終ルートでも元の世界には戻れない
作中で「戻る」という選択肢は最初から存在しない。

焦点となるのは、
残された側と消えた側のやり取り
世界間通信は不可能だが、主人公とヒロイン間だけメールが届くという奇跡設定。
さらに、残された側は消えた人の記憶を失っている。

この構造から、ラストがどうなるかは先読みが得意でなくても察せてしまう。
良くも悪くも“読める”展開。


■ グラフィック|茶太OPの美しさは健在。原画は“ほどほど”の安定感

OPは茶太の甘い歌声とともに美しい映像に仕上がっている。
原画アマクラは前作同様“ほどほど”の安定感。

Hシーンは薄め。
よくわからない描写のものが数個あり、
「サブはサブでいいんだよ」というメーカーの遠慮が見える。
正直、無理に全員にHを割り当てなくても良かった。


■ ヴォイス|いちごみるくが頑張っていた

特筆するほどの豪華さはないが、
いちごみるくの演技が印象に残る。


■ サウンド|特筆なし

音楽面で強く印象に残るものはない。


■ システム|基本は揃っているが、構成の割に選択肢が少ない

基本システムは問題なし。
主人公1人に対してヒロイン2人という割り当てで、選択肢も少なめ。

難易度:易
攻略時間:15時間


■ 総評|“しっかり作っているのにあと一歩足りない”という惜しさが残る

宣伝は良い。デザインも良い。構成も悪くない。
だが、物語の核心に踏み込む勇気が足りない

前作もサバイバル系だったが和姦ばかりで毒が弱かった。
今回も設定的にはもっと“本能”を描けたはずなのに、
毒として機能する部分が弱い。

もちろん、そういう刺激を求めない層に売っているのかもしれない。
だが、そうであれば路線変更を検討すべきだと思えるほど、
設定と物語の噛み合いが惜しい。

■ 68点(クラスB)

【レビュー】私は私のまま誰にでも変われる|混沌・狂気・衝撃。ここ数年で最強クラスの“怪作”

【レビュー】私は私のまま誰にでも変われる|混沌・狂気・衝撃。ここ数年で最強クラスの“怪作”

■ 短評|掛け値なしのカオス。期待を裏切り続ける快感

ここ数年で最もカオスなゲームが登場。
何一つ期待に応えず、何一つ定まらない。
しかし、この混沌から溢れ出す異様な衝撃が快感で、
傑作・良作といった分類ではなく、紛れもない怪作と呼ぶべき一本。


■ ポイント|ターゲット不明。萌え→エロコメ→バカゲー→ホラー→伝奇バトルの怒涛の変化

どの層を狙っているのかまったく不明。
萌えを押したかと思えばエロコメディ、
そこから超バカゲーへ転落し、
ホラー・サスペンスを経て伝奇バトルが始まる。

これをカオスゲーと言わずして何をカオスゲーと言うのか。

普通なら確実にgdgdになる構成だが、
本作は“謎解き”という一本の命綱で全ルートを強引に繋ぎ止めている。
この強引さが逆に凄い。

ぶっ飛んだネタ、他社イジリ、声優の豪華さというスパイスが、
「もう少し続けてみるか」と思わせる絶妙な中毒性を生む。

各ルートのラストで次周への引っぱりが強烈すぎて、
気づけば最後まで走らされる構造。

ルートは開放型。攻略は愚者の館の手順が最適。
なお、VISTAは非対応。管理者権限必須。


■ グラフィック|OP微妙、EDは縦ロール。立ち絵は数段落ちるが“そこで諦めたら負け”

OPはいまいち。EDはスタッフ縦ロール。
立ち絵は正直かなり厳しいレベルで、開始早々やめたくなる。

しかし、このゲームはそこで諦めたら終わり
無駄に恐怖感を煽るCGやネタCGは妙に印象に残る。
実用性も意外とある。


■ ヴォイス|第1種分類声ゲー。キャスティングが狂ってるレベルで豪華

奏介さんはいませんが、声優陣は狂気の豪華さ
風音さんをこんな無駄遣いするメーカーはアホとしか言いようがない。
一から十まで声優ゲーとして成立している。


■ サウンド|キャラソンは多いが無視してOK

声優に力を入れすぎた結果キャラソンが充実しているが、
特に聴く必要はない。
BGMも特筆なし。


■ システム|基本は揃うが使いづらい。パッチ必須だがパッチ後も問題あり

基本システムは搭載しているが、
会話ウインドにステルスでUIが乗っており使いづらい。
景観は良いが実用性は低い。

回想は中途半端で、全Hシーンが収録されない謎仕様。
パッチを当てないと致命的エラーの可能性あり。
パッチ後はスキップが音声と競合して解除されるという別の問題が発生。

難易度:普通
攻略時間:15時間
オールコンプで種明かし解放。


■ 総評|普通のゲームに飽きた人へ。バカゲー・怪作の歴史に刻まれる一本

普通にやったら地雷。
しかし、とんでもないバカゲーを求める人
訳がわからない衝撃を受けたい人
エロゲ史の後学として怪作を押さえたい人には刺さる。

間違いなく埋もれる作品だが、
ワゴンで拾った時に「こんな怪作があった」と語れる一本。
最後までやるとオールコンプの価値がわかる。

3年熟成されて変な方向に発酵した結果のカオス。
個人的には非常に面白い作品だった。

■ 75点(クラスA)

【レビュー】ボリュームセブン|テンポの良さが“忙しさ”に化けた群像劇ADV

【レビュー】ボリュームセブン|テンポの良さが“忙しさ”に化けた群像劇ADV

■ 短評|忙しい群像劇

主人公切り替え型の一本道ADV。
テンポの良さがそのまま“忙しさ”になってしまい、
落ち着いて物語に浸る余裕がほとんどない作品だった。


■ シナリオ|切り替えの多さと尺不足が致命的。面白くなる前に場面転換

主人公が次々と切り替わる群像劇形式。
並行処理の難しさがそのまま露呈しており、
個別ルートの短さ・尺不足・場面転換の早さが大きな弱点。

一つの事件を軸に全キャラが巻き込まれていく構造だが、
キャラの心情がモノローグで深掘りされないため、
読者が大局観を持っていないと理解が追いつかない。

「面白くなってきたかな」と思った瞬間に別キャラへ切り替わるため、
テンポは良いが没入感が削がれる

● 舞台設定は重いが、活かしきれていない

組織設定でキャラを分断する方向性は見えるが、
語られない仔細が多く、設定の重さが空回りしている印象。

● 見せ場は確かにある。だが“引き”が弱い

・自立歩行する携帯が越境してくるシーン
・境界で主人公とヒロインが手を合わせるシーン

こうしたJ-MENTらしい演出はしっかり存在する。
だが、良いシーンほど早く切り替わってしまい、
もっと引っ張ってほしいと思わされる。

● エピローグ不足とafterエピソードの扱い

物語の落ちは王道だが、エピローグが短すぎる。
クリア後のおまけにafterエピソードが収録されており、
そこに重要な話やヲチが入っているのも構成として惜しい。

そして、やっぱり百合がある。やっぱり。


■ グラフィック|神月社OP+笛キャラデザの安定感

OPは神月社。RMGからの変化が新鮮。
立ち絵・背景ともに安定しており、
キャラデザは笛氏なのでいつも通りの安心感。

舞台は横浜市営地下鉄沿線。
かみおおおかの描写に懐かしさを覚える人も多いはず。


■ ヴォイス|羽戸まつのの“増殖”は今回も健在

羽戸まつのさんは今回も統一する気ゼロ。
どこまで増やせるか挑戦しているのではと思うほど。
だが、どんな設定でも安心して聴けるのが強み。

TOMAは下野紘なのか柿原徹也なのか、
自分の中で判別がつかず混乱。
前作レビューも間違っていたのではと不安になる。


■ サウンド|挿入歌が特に良い。BGMも高水準

OPはもちろん、挿入歌の出来が非常に良い。
BGMも高水準で、音楽面は安定している。


■ システム|ワイド画面の工夫は好印象。選択肢は意味不明

基本システムは問題なし。
デバッグ漏れの選択肢確認があるが致命的ではない。

ただし、選択肢の意味がわからない
一本道でBADもなく、テキストが少し変わるだけなら、
そもそも選択肢はいらなかったのでは。

ワイド画面モードは優秀。
テキスト枠横にステルス表示されるシステムが、
読みづらさを軽減してくれるユーザーライクな仕様。

難易度:易
プレイ時間:12時間
2周目もスキップで確認したが変化なし。


■ 総評|理解はできるが“楽しむ余裕”がない。尺不足が最大の敵

最初から最後まで読めば大筋は理解できる。
ただし、名前のアナグラムだけは最後までわからなかった。

前作のようにゆったりした構成ならもっと良かったはず。
抑えるべきところは理解しているだけに、
尺不足が本当に惜しい

一本道でBADもなく、選択肢も意味がないなら、
最初から選択肢なしで良かったのではと思わざるを得ない。

この規模の設定なら倍の尺が必要
忙しすぎて、物語を味わう余裕がなかった。

■ 66点(クラスB)

【レビュー】海道|“平凡”の一言に尽きるが、田舎情緒は確かに光るD.O作品

【レビュー】海道|“平凡”の一言に尽きるが、田舎情緒は確かに光るD.O作品

■ シナリオ|雪桜と大差なし。使いまわし感と無難さが前面に出た一本

はい、D.Oさんです。
エースが抜けて以降どうにもパワー不足な作品が続いているが、今回はどうか──
結論としては「平凡」の一言に尽きる。

舞台は瀬戸内海に面した小さな二子島。
閉鎖的な島での学園生活、田舎に特化した背景を元に、
しみじみ系のハートフルストーリーを目指した模様。

しかし、目立った設定はなく、
いろんなところからの使いまわし感が漂う
前作『雪桜』とほぼ変わらない構成で、
「これでいいのか?」という疑問が残る。

ただし、既成の枠にとらわれないナイスキャラが一名存在し、
そこだけは光っていた。
自社の過去作ネタを使うのは卑怯だが、笑ってしまったのも事実。

ラストはやや難あり。
全体的に無難で、悪くはないが強く推せる部分も少ない。


■ グラフィック|田舎情緒がしっかり出ている良作

グラフィックはとても良く出来ており、
田舎の空気感・情緒がしっかり伝わる。
背景の雰囲気づくりは高評価。


■ ヴォイス|主人公以外フルボイス。ミスキャストなし

主人公以外はボイスあり。
この手のゲームでボイスがなかったら困るが、
キャスティングは安定しており、特にミスキャストもない。


■ サウンド|雰囲気を支えるBGMが多い

田舎の空気感を醸し出す曲が多く、
作品の雰囲気づくりには貢献している。
特筆するほどではないが悪くない。


■ システム|D.O標準の安定システム

セーブ&ロード、バックログなど基本機能は揃っており、
D.Oのシステムは相変わらず安定している。
特に不満はなし。


■ 総評|“及第点”だが、D.Oの名を思うと物足りない

一言で言うと平凡
目新しさが欲しかったが、最低限のラインはクリアしている。

『雪桜』『海道』と続けて“それなり”の作品ではあるが、
加奈・家計のD.Oを知っていると腑に落ちない。
ライターが抜けたとはいえ、もう少しなんとかならなかったのか。

エンディングが全キャラ同じ過程を通るため、
読み手としては「またか」となる。
設定をもっと活かせたはずなのに、意外性が薄いのは残念。

好きなキャラ:しのぶ
■ 65点

ガン( ゚д゚)ガレD.O

【レビュー】夢見ヶ丘|“夢は現”…いやこれは悪夢。説明不足と迷走構成がすべてを崩した残念作

【レビュー】夢見ヶ丘|“夢は現”…いやこれは悪夢。説明不足と迷走構成がすべてを崩した残念作

■ シナリオ|説明不足・芯なし・超展開未満の“とんでも構成”

夢は現──いや、これは夢に違いない。
そう言いたくなるほどの踏み抜き感が強烈だった。

まず、シナリオが明らかにおかしい。
事象と事象を繋ぐ説明がなく、超展開というより説明放棄
物語に芯がなく、「何をしたいのか」が最後まで見えてこない。

尺が短いせいで展開が速すぎ、
「わけがわからない」のは当然と言えば当然。
延期してまで出した作品とは思えない粗さ。

● クロスチャンネルの舞台設定を“使い捨て”

群青というワードが頻繁に出てくるため、
クロスチャンネルの舞台設定を引き継いでいるように見えるが、
まったく活かされていない
意味がないどころか、むしろ邪魔。

コンプしても主人公の群青が何なのか不明。
舞台は瀬戸内海の丘が綺麗な島、
テーマは「人の心に響く思い・願い」らしいが、
ラストは投げっぱなし、もしくはBAD。

● ヒロインの謎が即バレする雑さ

ヒロインの抱える謎が即座に思いつき、そして当たる。
伏線でもなんでもなく、ただ浅いだけ。
ライターの力量不足が露骨に出てしまっている。

「何を見せたかったのか?」
逆にそこが気になってしまうほどの迷走ぶり。


■ グラフィック|OPは良いが、キャラデザは割り切りが必要

OPムービーは良い出来。
だがキャラデザは“こういうもの”と割り切るしかない。
抜き目的では厳しい。


■ ヴォイス|演技は安定している

声優陣は全体的に上手い。
ここだけは安心して聴ける。


■ サウンド|特筆なし

特に印象に残る曲はない。


■ システム|基本は揃っているが“重い”

基本システムは搭載されているが、動作が重い。
快適とは言い難い。


■ 総評|感動も萌えも燃えも“何もない”。ただただ困惑だけが残る

感動も萌えも燃えも、考えさせられるものも何もない
他人に勧められる要素が見当たらない。

もちろん感じ方は人それぞれだが、
自分の物差しで測っても「これはない」と言わざるを得ない。

作中で「大人の事情」という言葉が連発されるあたり、
制作周りの事情も察せなくはないが、
それでももう少し頑張ってほしかった。

がんばれフラシャ。がんばれ。

好きなキャラ:なし
■ 55点(クラスC)

このゲームをプレイした人が全員( ゚Д゚)ポカーンとならないことを祈る。

【レビュー】つよきす 2学期|“二学期”の名を冠しながら、続編でもリニューアルでもない中途半端さが痛い

【レビュー】つよきす 2学期|“二学期”の名を冠しながら、続編でもリニューアルでもない中途半端さが痛い

■ 短評|大崩れはしない。しかし理解に苦しむ出来

致命的に破綻しているわけではない。
だが、「なぜこうなった?」という疑問が最後まで拭えない。
そんな作品だった。


■ シナリオ|攻めない。掘らない。変えない。なのに改悪されている不思議

まず言いたいのは、まったく攻めていないということ。
既存キャラのシナリオは前作の焼き直し……どころか改悪
ほとんどいじっていないのに改悪できるのは逆にすごい。

「二学期」と名付けたからには、続編かサイドストーリーが来ると思うのが普通。
しかし実態はリニューアル版に近いのに、その説明が一切ない

前作を掘り下げろとは言わない。
同人感覚で楽しむ覚悟もしていた。
だが、前作まんまの構成を中途半端に端折っただけでは、
ユーザーはどう楽しめばいいのか。

● ターゲット層が不明すぎる

前作未プレイなら「そこそこ遊べる」レベル。
前作プレイ済みなら地雷倍率ドン
誰に向けて作ったのか本気でわからない。

● 唯一の救い:新キャラ「瀬麗武」ルート

完全新作ルートで、ここだけは評価できる。
だが、属性もキャラ設定も活かしきれていない。

● 世界観への理解が浅い

脇役の存在意義が消え、主人公の性格もブレブレ。
この世界を本当に理解しているのか疑わしい。

正直、そこらのSS書きに任せた方が数倍良いものができたと思う。

● 生き残る道は二つしかなかった

・タカヒロを徹底的にトレースする
・世界観をぶち壊して奔放にいじる

このどちらかしかなかったのに、
どっちつかずの中途半端さで終わってしまった。
失望は免れない。


■ グラフィック|EDムービーは良い。キャラデザも踏ん張った

OPは普通だが、EDはかなり良い。
キャラ別エンドムービーを用意した点は評価したい。

キャラデザも違和感は少なく、よく踏ん張ったと思う。
まったりエンドのアスラーダCGにはニヤリ。あと3年だな。


■ ヴォイス|全体点数の9割を支える“キャスト力”

安心して楽しめるのは声だけ
掛け合いは最高。
だが、あまりにも無駄遣いされていて悲しくなるほど豪華。


■ サウンド|特筆なし

特に語るべき点はない。


■ システム|選択肢が形骸化。余力のなさが透けて見える

基本システムは問題なし。
ただし、シンボルチョイス式のルート選択は良いとしても、
進行中の選択肢が完全に形骸化している。

ここにもシナリオの薄さ、余力のなさが表れている。

難易度:易
攻略時間:12時間前後


■ 総評|前作プレイ済みほど刺さる“凶悪仕様”。だがキャストのために買ったなら悔いはない

結論:地雷
前作プレイ済みならさらに倍率ドン

「だから言っただろう」という声が聞こえる。
予防線を張りまくっても、良作とは言えないレベルだった。

ただし、キャスト陣だけは裏切らない。
声のためだけに買ったなら悔いはない。

さぁ、漏れの屍を超えて行きなさい。

■ 60点(クラスC)

【レビュー】つよきす|タカヒロの“すごい”パロディが本領発揮された快作

【レビュー】つよきす|タカヒロの“すごい”パロディが本領発揮された快作

■ 短評|タカヒロの すごい パロディ

タイトルの謎さも含め、つよきすはパロディとキャラ掛け合いの融合点に立つ作品。
タカヒロの持ち味が最もわかりやすく形になった一本。


■ シナリオ|パロディの奔流に隠れた“キャラと主義主張”の物語

つよきすはパロディの印象が強いが、
本質はキャラクター同士の掛け合い
主人公・レオの主義主張を軸にしたストーリー。

レオのクールさは、ユーザーにとっては逆説的な指示のように響く。
吉本的な典型ネタを清々しいほど好印象に変換するライティングは見事。

● 脇役の“引っ張り”が王道的カタルシスを生む

普段は投げ捨て気味のギャグを連発しつつ、
ここぞという場面で期待に応える構成は王道そのもの。
読み手が「来るぞ」と期待し、それが叶う──
この成功体験がカタルシスを生んでいる。

● ネタ選びのセンスが“風化しない”理由

時期を外れるとわからなくなるような軽いパロディではなく、
普遍的に親しまれるネタ選びがされている。
コンシューマでも似たことはできるが、
エロゲー特有のシーン運びとテキストが作品を唯一無二にしている。

エロ・パロ・シナリオの比率が絶妙だったからこそ、
つよきすはここまで人気を得たのだろう。


■ グラフィック|白猫参謀の“味のある”キャラデザ

白猫参謀のキャラデザは独特だが、
かっこいい女キャラを描かせると本領発揮
クセがあるのに魅力的という稀有なタイプ。

OPはKOTOKOの電波ソングと合わせて勢いのある映像に仕上がっている。


■ ヴォイス|金田まひるの好演が作品を牽引

蟹(乙女さん)を演じた金田まひるの好演が光る。
キャラとのマッチ度が高く、物語を引っ張る存在感。

男性キャラもハイスペックなキャスティングで、
声ヲタとして誇らしい布陣。
タカヒロの強みが存分に発揮されている。


■ サウンド|特筆なし

音楽面は特に語る部分はないが、
作品のテンションを邪魔しない無難な仕上がり。


■ システム|きゃんでぃそふと系の標準ADV

きゃんでぃそふとの流れを汲む標準的なシステム。
難易度は易しく、攻略時間は20時間程度。


■ 総評|タカヒロの名を世に知らしめた“開花作”

タカヒロは『姉、ちゃんとしようよっ!』の頃から注目されていたが、
つよきすで完全に開花したと言える。

2005年という、ユーザーが多様な作品を求め始めた時期に、
パロディで笑わせつつ、物語としても成立させた点が大きい。

Hシーンもタカヒロらしい“エロゲーらしさ”があり、
萌えゲーに距離を置いていた層にも刺さった。

アニメ・ゲームからの取り込み方に関して、
タカヒロほど“完璧な主義”を貫けるライターは他にいない。
他人の褌で相撲を取ると言われても、
ここまで上手く取れるならそれも才能

■ 80点(クラスA)