欲している物語というのは、いつだってあるがそれは自分の中であやふやだ。
それはそういうものであると認識しているが、
「この空のまもり」を読んで今回自分が求めていたのはこんな形だったのだなと思った。
ハヤカワJAは大抵挿絵がない、最近の迎合文化だとわからんけれど。
けれど、表紙にはキャラクターが書かれることもある。
ビジュアルの補整というものはそこにしか働かない。
だからなんだ?ということだが、顛末として今回そこに仕掛けがあってなるほどぅと膝を打つ。
舞台は日本で大久保。しかし、だいぶいろんな意味で負け続けた結果の日本と言える。
相変わらず芝村さんの書く日本は負けている様である。
けれど、あとがき曰く世情を反映したとのことで今回は大丈夫。
AR技術がもっと身近になり、拡張現実のタグ乱用され擬似現実を侵食されている。
もっとも侵食されているタグは諸外国のものであり、日本の地位を貶めるもの。
それらを政府が放置し対処できないでいる中、愛国の義をもって立ち上がるニート。
主人公がニートであるが、婚約が確定している幼馴染がいるし天才ハカーという、
もはや・・・という設定ではあるが、嫌いになれないパーソナルが人たらしとして確立させている。
その主人公が立ち上げた擬似タグを排除し、日本の空を守る防衛大臣として、
辣腕を振るい幼馴染を助けている「つもり」だったのが今回というのがストーリー。
後半、愛国心が暴走する。それは海を超えた隣の国の様に。
暴走するのが前提のような作品ではあるが、
本作はストッパーとして登場人物としてそれぞれの視点3つの視点で描かれ主人公へ収束する。
それは王道且つ実に気持ちいい瞬間でありエンターテイメントだった。
ラスト主人公の演説がある。
「愛国心は……誰かを傷つけなくても出来る。(中略)真なる日本とやらは、
折り目正しく助け合う秩序だったいつもの我々であることを」
というセリフが象徴出来る作品であり続けた、芝村トリガーが留まったことに安心し、
そこから先の擬似現実の描写が素晴らしすぎたことをここに記す。
わりと前半が重めだけれど、サクサク読める作品。読んで損なし。
芝村と早狩と吉宗でなんか作ってくれ。