【レビュー】HoneyComing|丁寧だけど“中途半端”で嘘っぽい純愛学園ADV

【レビュー】HoneyComing|丁寧だけど“中途半端”で嘘っぽい純愛学園ADV

■ 短評

丁寧なのは良い。だが「中途半端」すぎて嘘臭く感じてしまう。


■ シナリオ

突き詰めれば「合う・合わない」の問題なのだろうが、
それ以前に純愛とは何なのかという疑問が尽きない作品だった。

舞台は恋愛授業という謎カリキュラムのある、共学化された元女子校。
結局は普通の学園モノであり、
「好きなキャラとの恋愛過程を楽しんでください」という意図は理解できる。

しかし、キャラクターの心の機微を描くはずのシナリオが、
どうにも心に刺さらない。
少なくとも自分の心を掴むキャラはいなかった。

● 普通すぎて逆に“ファンタジー”に見える学園生活

キャラが普通すぎて逆に嘘っぽい。
学園というフィールドが全く活かされていない。
昨今の「恋愛」「キス」「学園もの」乱発の影響もあり、
普通であるがゆえに色褪せてしまっている。

恋愛授業でのフラグ立ても、
気になるあの子との接点を彩る手法としては新鮮味に欠ける。
単に自分が学園モノに飽きているだけかもしれないが、それでも弱い。

● 唯一の光:オンリーワンモード(俺の嫁システム)

HOOKのオンリーワンモード、いわゆる「俺の嫁システム」は非常に良い。
選択したキャラに愛着を持たせる発想は新鮮で、
本編+FD要素を一作で楽しめる点は高評価。

ただし、キャッチーなキャラを選ぶには不向き。
どんなキャラか分かる前に、ファーストインパクトで選ぶしかないからだ。

● もっと“普通のフィクション”だったら良かったのに

もしシナリオが現実寄りで、
2次元の“平常”を装ったフィクションだったなら、
学園モノではなかったなら、
もっと楽しめたと思う。

完成してしまっている以上どうしようもないが、
その点で由馬シナリオが逆に“ありえなくて”高評価になるのが不思議だ。

そして何より苺が攻略できないのが腹立たしい。ちくしょう。


■ グラフィック

キャラデザに文句なし。
OPムービーも良い出来。


■ ヴォイス

まきいづみキャラが攻略できないのは嫌がらせですか?


■ サウンド

タイトル画面で「BGMLHR」と入力すると流れる8bitBGMは無駄に気合が入っている。
キャラソンもあり、OPはまずまず。


■ システム

基本的なシステム構成。
HOOK発のオンリーワンモード(俺の嫁システム)は最大級の評価に値する。

難易度は易しい。


■ 総評

寸止めのコンシューマ版の方が作風に合っているのでは?
というのが正直な感想。

そもそも純愛なんて分からないのだから、
完成しているかどうかなんて分かるはずがない。
プラトニックを求めるなら、
異性に愛を求める行為自体がジレンマだと思う。違う?

結局のところ、自分の敗因は
・平坦なシナリオ
・キャラの肉付け不足
ではなく、
教師が攻略できない憤慨と、現代学園モノだったことに尽きる。

■ 68点 クラスB

【レビュー】ひとゆめ|丁寧さが裏目に出た“眠くなる”構成の惜しい一作

【レビュー】ひとゆめ|丁寧さが裏目に出た“眠くなる”構成の惜しい一作

■ 短評

非常に眠くなるゲーム。


■ シナリオ

丁寧に、丁寧に──その姿勢は確かに伝わる。
しかしその丁寧さが裏目に出て、シナリオ全体が“のっぺり”とした展開になってしまっている。

ルート構成は大きく2つ。
・ダブルヒロインルート
・その他3人ルート

共通パートが長く、まったりしすぎて体感的にはさらに長い。
テンポが悪いというより、複数ライターの影響なのか、
選択したヒロインルートに入っても選ばれなかったヒロインの共通描写が厚すぎるため、
いちいち引っかかり、展開が重く感じられる。

選ばれなかったヒロインの葛藤やリンクを描きたいなら、
直接描写ではなく、仕草・語感・語尾などでプレイヤーに補完させる方が
スマートで他ルートへの影響も少なかったはず。

● 題材の料理に失敗したというより“手を加えすぎた結果の歪み”

題材を活かしきれなかったというより、
あれこれ手を加えた結果、全体がうまく噛み合っていない印象。
根底に流れる一つの影響力を多角的に見せるという古典的手法ではあるが、
そこに辿り着くまでにプレイヤーが疲れてしまう。

やりきるには少々体力が必要。

ただし、絵の魅力は本作最大のプラス材料。
これがなければ途中で投げてもおかしくない。


■ グラフィック

もしかしたら tony、佐野に続く伝説の幕開けかもしれない──
そんな期待を抱かせるまっぴーらっくの原画。

一部CGは異次元レベルだが、全体としては非常に魅力的。
キャラの艶というより、線の細い美麗さが際立つタイプで、
今後に注目したいトップクラスの原画氏。

OP・EDは標準的。


■ ヴォイス

金田まひる、青山ゆかりなど豪華な面子。
演技面は合格点。


■ サウンド

OP・EDは橋本みゆき × 藤田淳平の強力タッグ。
BGMは milktub だが、いつものノリとは違い新鮮で良い仕上がり。

これ以上を望むのは贅沢だろう。


■ システム

標準的なシステム構成。
バグはないが、一部回想処理などで謎の不具合あり。

VISTAパッチの対応は非常に好感が持てる(どこかとは違って)。

難易度は易しい。


■ 総評

普段あまりやらない点数内訳をすると、
絵:50/69、シナリオ:9/69、音楽:10/69。
ビジュアル面で限界まで点を盛ってこの評価。

本作の問題はテキストやシナリオそのものより、
構成の歪さが目立つ点にある。
そこに足を取られ、ずるずるとテンポが崩れていく。

キャラ付けは魅力的だが、少し幼さが目立つ。
精神年齢をほんの少し上げるだけで、
もっと締まったシナリオ運びができたはず。

総じて、惜しいような惜しくないような……
消化不良感の残る一作。

■ 69点 クラスB

【レビュー】姫さま凛々しく!|方向性は明確なライト系ヌキゲー、しかしシステムが惜しい

【レビュー】姫さま凛々しく!|方向性は明確なライト系ヌキゲー、しかしシステムが惜しい

■ 短評

システム面の粗さがどうにも気になる作品。
選択肢中にセーブできない、パッチ前はタイトルからロードすらできないなど、
基本的な部分でストレスが溜まる仕様が目立つ。
ただし、ヌキゲーとしての方向性は明確で、エロ比重はかなり高め。
最初からそのつもりで作られた作品だと感じた。


■ シナリオ

「姫属性」と銘打たれているものの、あまり姫らしさを感じない不思議な作品。
そして思っていたより長い。エロはガンガン来る。

シナリオについて語るべき点は正直少ない。
地雷ではないが、特筆すべき部分もない。
完全にシナリオ無視のヌキゲーというわけでもないが、
ベースはお約束展開で、エンディングも無難にまとまる。

● 「凛々しく」が枷になっている

タイトルの「凛々しく」という要素を表現するために、
世界に敵を作り、それと対峙させる構造を取っている。
しかしその結果、ヒロインの“凛々しさ”よりも勧善懲悪の印象が強くなり、
テーマが薄まってしまっている。

本来「凛々しさ」とは外面だけでなく、
内面から湧き出る心意気を描くべきだと思う。
「私は戦う、逃げない!」という外向きの強さだけでなく、
そこに至る内面描写が必要だが、本作では不足している。

● ヌキゲーとしての評価

ヌキゲーの評価基準は「抜けるかどうか」。
その点で言えば、シチュエーションエロ描写はかなり力が入っており、
要するに抜ける。


■ グラフィック

OPムービーあり。出来はそこそこ。
グラフィック自体はかなり頑張っている印象。


■ ヴォイス

全体的に良好。
特に榊原ゆいの演技は非常にハマっており、エロシーンの破壊力が高い。


■ サウンド

特筆すべき点なし。


■ システム

基本システムは一応搭載しているが、完成度は低い。
タイトル画面にロード項目がない(パッチ後に改善)、
システムパネルの使いにくさは異常レベル。
スキップなどの操作性も悪い。

難易度は普通。
調合システムの影響でフラグが分かりにくく、
特にマナフィーゼルートが難しい。

コンプリートするとタイトル画面が変化する。


■ 総評

「あれ?こんな方向性で来たの?」
前作からガラッと作風を変えてきた印象が強い。

システム以外の出来は悪くないし、
作品情報を理解した上で購入すれば問題ない内容。
ただし、ヒロインより主人公の内面描写が多すぎる点は気になった。

好きなキャラはみさら。
もう少し掘り下げてくれれば、もっと魅力的になったはず。

■ 68点 クラスB

【レビュー】ひこうき雲の向こう側|「好き」の一言が言えない物語が突きつけるもの

【レビュー】ひこうき雲の向こう側|「好き」の一言が言えない物語が突きつけるもの

■ 短評

好きの一言が言えなくて。


■ シナリオ

率直に言えば、非常に胸糞悪いシナリオだと思う。
人が悪い、とすら言える。

序盤は切り捨てたくなるほど不快で、中盤以降もルートによっては同様。
普段なら即売り確定の展開だが、今回は後発で評価を見てからプレイしたため、
「何かが起こるのだろう」と我慢して読み進めた。

● “我慢”という行為について

不快感を抱えながら読み進めるという行為は、
言い換えれば「カタルシスへの手順」なのだろう。

しかし、表面的に我慢しなければ得られない物語に価値はあるのか。
その問いがずっと頭に残った。

● ヒロイン像と物語の強引さ

本作は、他人の恋愛を覗き、自分の価値観とのすり合わせに失敗したヒロイン、
そして複数のヒロイン像を巡る物語だ。

だがその過程は強引で、嫌悪感を隠さない。
ライターが勝負しているのは分かるが、どう考えても“人が悪い”シナリオである。

根底にあるのは「かなり無理やりな不幸話」
倫理観に沿ってマイルドにすることもできただろうが、
それではこの作品の“風味”が損なわれるのも確か。

とはいえ、メインヒロインの過程と手順はイリーガルすぎて嫌悪感が強い。
この点を補えるほどの進行力が物語にあったかと問われれば、答えは「否」。

では作品として「否」かと言われれば、それもまた「否」。
この二重否定が本作の難しさだ。

● 評価される「美汐 瑛莉ルート」について

巷で高評価の瑛莉ルートは、確かに評価に値する。

すべての元凶である彼女のルートが、なぜ評価されるのか。
プレイ中ずっと考えていたが、結論はこうだ。

“問題のあるヒロインの人生の終幕まで描き切る作品は少ない”

珍しいとは言わないが、稀有であることは確か。
紆余曲折を経てやっと解決する恋と、その発露。
短評がすべてを物語っている。


■ 総評

恋愛は山あり谷あり、乱高下するものだが、
恋愛ゲームはその一幕だけを切り取ることが多い。

我々は皆、この問題のある瑛莉と同じ視点に立っている。
その難しさは枚挙に暇がないが、
“100を飲み込んでそうじゃね?”と仮定すると、
先に述べた嫌悪感の根底に触れられる気がする。

● 「我慢しなければ得られない物語」の前提が変わる

そもそも我々は傍観者だ。
だが昨今、読み手のストレスフリーへの渇望は凄まじい。
小説投稿サイトを見れば顕著で、自分も例外ではない。

物語への向き合い方を忘れたのか、忘れていたのか、
もう思い出せないのかもしれない。

よく言われる至言がある。

「嫌なら見なければいい。俺は嫌な思いしていないし」

だが現代は、読み手に優しくしすぎ、甘やかしすぎたツケを
お互いが支払う時代に入っているのではないか。

そんなことを考えさせられた作品だった。

■ 75点 クラスA

【レビュー】ひかえぃ!|低価格ながら意外な満足度を残すライト抜きゲー

【レビュー】ひかえぃ!|低価格ながら意外な満足度を残すライト抜きゲー

「ひかえぃ!」のシナリオ評価・グラフィック・システム面を総合レビュー。
低価格帯ながら意外なサプライズがあり、ライトユーザーにもおすすめできる一本です。

■ 短評|コスパの良さが光る一作

価格帯を考えると十分満足できる内容。
期待値を下げて入ると「思ったより悪くない」と感じられるタイプの作品。


■ シナリオ評価|ヌキゲーにしては意外な“好リード”

ルート構成は以下の通り:

  • 夏姫ルート
  • 愛ルート
  • トゥルーエンド

ヌキゲーにシナリオを求めない前提で進めると、
「あれ、意外と悪くないぞ?」という好リードを見せてくれる。

真面目に物語を追うと肩透かしを感じるかもしれないが、
軽い気持ちでプレイすれば最後にちょっとしたサプライズがある。

気に入らない人は気に入らないだろうが、
自分はプレイ後に「悪くないな」と素直に思えた。


■ グラフィック評価|カットイン演出が光る

OPムービーなし、EDムービーなし(EDロールのみ)。
背景・キャラデザは標準的。

ただし、ありがちな技法ながらカットイン演出が非常に生きている
派手なエフェクトを使わずとも場面を盛り上げられており、
演出面のセンスを感じた。


■ ボイス評価|女性フルボイスで安定

女性キャラのみフルボイス。
特に違和感もなく、安定したクオリティ。


■ サウンド評価|単調だが作品の雰囲気には合う

曲は単調で強い印象は残らないが、
作品の雰囲気的に問題はなく、邪魔にもならない。


■ システム評価|やや重いが基本は揃っている

基本システムは一通り搭載。
ただし全体的にもっさりしており、動作が少し重い。

難易度は易しい。

トゥルーエンド後には回想に「おまけ」が追加されるが、
これが非常に意味深で気になる内容。


■ 総評|トゥルーエンドで一気に評価が上がる作品

ライトな抜きゲーであり、絵が突出しているわけでもない。
シナリオ量やルート数も少なく、光る部分が多い作品ではない。

しかし、トゥルーエンドの主人公が別人のようにキレていて妙にカッコいい。
前フリはあったが、まさかこの形式で物語を締めてくるとは思わなかった。
そこに確かな“光るもの”を感じた。

全体的に説明不足なシナリオの中で、
トゥルーエンドだけは「見せ場」をしっかり理解しているライターの手腕が光る。
物事が解決していく心地よさがあり、満足度が高い。

題材は印籠ゲームというアホっぽい設定だが、
やっていることは実にベタで、むしろそこが良い。

■ 69点 クラスB

【レビュー】ひぐらしのなく頃に祭|原作既読者こそ遊ぶべき“もうひとつの完結”

【レビュー・評価】ひぐらしのなく頃に祭|原作既読者こそ必見の“もうひとつの完結編”

PS2版「ひぐらしのなく頃に祭」のレビュー・評価まとめ。
原作プレイ済みでも新鮮に楽しめる追加シナリオ「盥回し」「憑落し」「澪尽くし」の魅力、
グラフィック・ボイス・システム面の変化を詳しく解説します。

■ 短評|ひぐらしのなく頃に祭は“やる価値あり”の一本

面白いからやれってんだよこんちくしょう!
原作未プレイ者はもちろん、原作プレイ済みの人にこそ触れてほしい。
「これが最後だからこそ」魅せられるものがある。


■ シナリオ評価|追加シナリオ3編が大きな魅力

原作シナリオの詳細は過去レビューやwiki(ネタバレ注意)に譲るとして、
ここでは「祭」で何がどう変わったのかに焦点を当てる。

● 選択肢導入でルート分岐が強化

最初の選択で主人公を決め、そこからルートへ入る構造はフラグ管理が非常に優秀。
ミスターKルートは謎欠けのため割愛するが、語り始めるとキリがないほど面白い。

● 新規書き下ろし3編の詳細レビュー

◆ 盥回し編|導入としては弱い

第一章としてヒントを出しすぎるうえ、物語として何も生み出さない。
ひぐらし導入ルートとしては無茶があり、みょんが可哀想。

◆ 憑落し編|原作ファンの願望を叶えるIFルート

「全フラグ持ち越しで綿流しに突っ込んだら?」という願望を叶えるIF世界。
ハーレムではなくスーパーギシアンモード

◆ 澪尽くし編|祭囃子に並ぶ“もうひとつの完結”

祭囃子編と同じ解決策をベースにしつつ、
ルールX・Y・Zすら突破し、全キャラの問題を一つずつ解決していく

まさに、
「強くてコンテニュー編」

祭囃子で疲弊した読者に向けた、
「そんなにたかのんに罪悪感を抱かなくていいよルート」でもある。

原作プレイヤーには賛否あるが、フォローも丁寧で、欠片紡ぎとして十分成立。
むしろ澪尽くし → 祭囃子の順でやると完璧。

エンタメとしての完成度は圧倒的に澪尽くしが上。
鉄甲弾はないけどヤンマーニがある。

● キャラ描写の強化

ミスターKの方向性、ヒロインの扱いなど、原作では曖昧だった部分が補強。
みょんの可愛さは反則級。まじで。あーみょん可愛いなちくしょう……。

悶えて、萌えて、燃えて、泣ける。
これぞエンターテイメント。


■ グラフィック評価|竜騎士絵から“実践的な絵”へ

竜騎士絵ではなくなり、より広い層に受け入れられる絵柄に変更。
褒める点と貶す点はひとつずつ。

  • 良い点:みょんのオパーイが大きくなった。
  • 悪い点:シオンのオパーイが小さくなった。なぜだ。

背景はすべて描き下ろしで、白川郷への愛が伝わるクオリティ。

グランドOP、澪尽くしOP、EDはどれも完成度が高い。
特に澪尽くしEDの新規CG演出は泣ける。


■ ボイス評価|アニメ版キャストの強さ

アニメ版キャストをそのまま移行。
羽入=堀江、やまなこコンビで死角なし。

鷹野=伊藤美紀は完璧すぎる配役。
声が付くと破壊力が段違い。


■ サウンド評価|彩音&いとうかなこの強力タッグ

OP1・OP2・ED1・ED2は彩音&いとうかなこ。
OP2は“ヤンマーニ”としても有名な重要曲。

BGMも非常に高品質。


■ システム評価|PS2移植で強化された操作性

選択肢追加により「かけら紡ぎ」の意思性が強化。
スキップ周りも快適だが、スタートボタンのスキップではCG回収不可。

予想プレイ時間:
・原作未プレイ:100時間
・原作済みで新規のみ:20時間

自分のプレイ時間:38時間(新規3編+解すべて)


■ 総評|“同人ノリ”と“コンシューマ規制”の狭間で戦った作品

CEROとの戦い、同人ノリをどこまで継承できるかという戦い。
結果として大幅な改編はあるが、無粋にならないよう最大限努力した跡が見える。

トミーの暴走機関車や赤坂の鉄甲弾は消えたが、代わりのネタを用意。
シナリオの綻びも極力感じさせないよう調整されている。

「かけら紡ぎ」による無限ルートの一部として見れば、これはこれで“ひぐらし”。
原作プレイ済みでも十分楽しめた。上出来。

嗚呼、みょんのおっぱいよ!永遠なれ!

■ 90点 クラスS

【レビュー】ひぐらしのなく頃に|「惨劇なんて無い、あったのは悲劇と喜劇。」4年越しで辿り着く祭囃子編の答え

【レビュー】ひぐらしのく頃に|「惨劇んて無い、あったのは悲劇と喜劇。」4年越しで辿り着く祭囃子編の答え

短評|「惨劇んて無い、あったのは悲劇と喜劇。」

鬼隠し編から祭囃子編まで、4年間追い続けた物語の終着点。
その結末は、まさにキャッチコピー通りだった。


シナリオ|性善説の上に構築された“最高の解”

鬼隠し編から始まり、毎編ごとに提示される「なぜ」「どうして」。
凄惨な事件、どうにもらない展開、ヤキモキする読者。
しかし祭囃子編に至り、それらはすべて終わりを迎える。

物語の根底に流れるのは性善説
作者の“思い”のようなものが確かに感じられる。

推理ゲームとしてのひぐらし

初期のひぐらしは、作者が「推理」という形で提示した物語だった。
今となってはその推理要素は形骸化したが、
作者が用意した“解答”に異を唱える人も多く、議論が盛り上がった。

しかし、どれだけの人が途中で脱落したか──
そんなことはナンセンスだ。
物語に引き込む力があった、それだけで十分。

BADENDの連続から、ついに辿り着く“最高の結末”

鬼隠し~皆殺し編までは、どれもBADEND。
犯人がわかっても、結末を見ければ完結とは言えない。

祭囃子編は、今まで積み上げた要素の上にある最高の解
これを見ずして、何を読んだ気にれるだろうか。

「もうこれ以上、どう転んでも幸せにしかれない物語」
それが祭囃子編。

各自、己の目で刮目せよ。


グラフィック|竜騎士絵でいと落ち着かない

独特の竜騎士絵。
最初は抵抗があっても、読み進めるほどに“これでいとダメ”になる不思議な魅力。


ヴォイス|無し

声が無いからこそ、想像が広がるタイプの作品。


サウンド|ED「そらのむこう」が沁みる

ED曲「そらのむこう」(歌:結月そら)が素晴らしい。
知らかった歌い手だが、心に残る歌声だった。


システム|一本道、そして“かけらあつめ”の焦れ

基本システム搭載。

「攻略んてない、あったのは一本道。」
まさにその通り。

祭囃子編の“かけらあつめ”は正直もっさりして焦れたが、
TIPSを先に読ませ、物語の補完を済ませた上で終幕に集中させるための仕掛けだったのだろう。


総評|同人ゲームがここまで広まった“奇跡”

同人ゲームがどのようにして多くの人に読まれるのか──
ひぐらしはその成功例として非常に興味深い。

最初はホラーとして広まり、次に“謎”で爆発した

最初は「怖い!」という話題性。
次に「犯人誰だよ!」という推理熱。

絵のハードルも高く、ネームバリューも無かった。
それでもプレイされ続けたのは、物語の力があったからだ。

型月との比較

同じ同人出身の型月も、文章と絵の両輪があったからこそ成功した。
ひぐらしは絵のハードルが高かった分、より“物語力”が試された作品だった。

文章を読ませることの難しさ

興味のない人に文章を読ませるのは難しい。
話題性は一過性になりがちだが、ひぐらしはそれを結果に昇華した。

作者の姿勢に泣かされる

作者曰く、

「現実世界はこんにも優しくない、でもこの作品には一つの魔法がある。他人を信じることで発生する奇跡。」

泣かせるじゃないか。

そして作者は「これはエンターテイメントだ」と言った。
ならば、それがすべてだ。

8つの物語を追い続けた4年間

「次の話はまだか」と心待ちにした作品は、そう多くない。
ひぐらしはその一つだった。

ありがとう、しおんのおっぱい。さらば。

■ 85点(クラスA+)

【レビュー】Hello,good-bye|重厚プロローグから一転、ライトに着地する異色のランプ作品

【レビュー】Hello,good-bye|重厚プロローグから一転、ライトに着地する異色のランプ作品

短評|メインライターが“赤線の人”と知って納得

プロローグの重さからは想像できないほどライトに着地する作品。
良くも悪くも、赤線時代からの“あと一歩感”と“突然の展開”が健在。


シナリオ|重厚な設定を投げ捨て、恋愛に全振りした不思議な構造

事前情報とプロローグから受ける印象は濃厚設定×悲壮感
しかし本編は驚くほどライトで、物語的危機を華麗に回避していく。

「あのプロローグは何だったのか?」
そう思うほど、設定の重さと本編の軽さが乖離している。

日本分割・冷戦状態という壮大な設定

倒幕の頃から続く日本分割、冷戦状態──
設定自体は非常に濃い。

その説明のために作中辞書(ハイパーリンク)が存在するが、
本来は物語の中で自然に説明されるべき部分。

辞書にしか答えがない謎も多く、
「そこ本編でやるべきでは?」という疑問が残る。

キャラのバックボーンを“なぞらない”構成

物語性を重視するなら、主題に沿ってキャラの背景を掘るべき。
テンポが悪くなるなら別軸や回想で補完すれば良い。

しかし本作はその余力があるにも関わらず、
設定とキャラの物語が噛み合わない

ただし“恋愛部分”はしっかり作られている

設定の重さを横に置けば、
キャラとの導線は丁寧で、恋愛ADVとしては十分楽しめる。

  • 突然好意を寄せ合う展開はない
  • システム・声優の力もあり没入しやすい
  • 盛り上がりきらない部分はあるが破綻はしない

棗ルートは別格

主人公の軍隊設定が活き、棗が可愛すぎる。
このルートだけで全て許せるレベル。


グラフィック|萌木原ふみたけ+圧巻のOPムービー

いつもの萌木原ふみたけ。安定の可愛さ。

OPムービーは曲の良さも相まって圧巻。
「やりおったわ」と思わず声が出る完成度。

各キャラHシーン3回、枚数も十分。


ヴォイス|神がかりキャスティング、第二種声ゲー認定

久々に「なんだこれ…神か?」と思うキャスティング。

九条信乃、杏子御津、AIRI、こゆき
この4人が揃うのは豪華すぎる。

  • 九条信乃:出演頻度は高いが安定感抜群
  • 杏子御津:最近存在感が増してきた
  • AIRI:相変わらずの実力派
  • こゆき:出戻りに驚愕。50歳手前であの声質は奇跡

特にこゆきの棗ルートは手に汗握るほどの演技。
濡れ場も手を抜かず、魂を感じた。

もし美都いずみが戻ってきたら…

「子太明、美都いずみ、こゆき、河合春華」
この四天王が揃う未来を想像すると胸が熱くなる。

真柴さんまで揃えば完璧。

バオバブの放出力は未知数だが、
この作品は未来への“とっかかり”を見せてくれた。


サウンド|奥井雅美×kicco×霜月はるかの豪華布陣

OP:奥井雅美
テーマ:kicco
ED:霜月はるか

OP「Hello,good-bye」は“あの頃のまっくん”を思い出す名曲。


システム|1280ワイド、未来予知ギミックが特徴

基本システムは快適。
選択肢でアニメーションを使った未来予知ギミックが目立つ。

難易度:易(褒章込みで普通)
攻略時間:13時間


総評|設定と物語が噛み合わないが、キャラゲーとしては良作

OP・声優など外側の豪華さが目立つが、
作品本来の性質として見ると、やはりメインライターの癖が強い。

赤線時代からの“あと一歩感”と“突然の展開”が随所に見られる。

ただし、ランプのキャラゲーとしては異色であり、
「こゆき点」の存在により個人的には良作判定。

こゆきの演じるキャラは「アンナ」「カイ」など、
役どころとして回ってくるたびに得点力を再認識する。

■ 75点(クラスA)

【レビュー】へんし~ん!|シチュエーション特化のメタモル系ADV、絵の強さで押し切るメイビー作品

【レビュー】へんし~ん!|シチュエーション特化のメタモル系ADV、絵の強さで押し切るメイビー作品

シナリオ|学園要素は飾り、シチュエーション特化のメタモルADV

maybeソフトは札幌だったのか…北海道連合なのか…とどうでもいいことを思いつつプレイ開始。
普段あまりこういうタイプはやらないけれど、絵が良すぎて手が伸びた

ジャンルとしては学園系メタモルフォーゼ
ただし学園である意味はほぼなく、シチュエーションの添え物程度。

幼馴染の「クララが立ったー」ネタ、魔女っこ、看護婦、隣の人妻──
シチュエーション重視のメイビーらしい構成

前作は70シーン近くあったので、今回はかなり軽め。
初回一周は約4時間。ジュエルオーシャンで苦しんだ身としては天国。

変心能力を得た主人公が煩悩のまま突き進む

変身ではなく変心
能力を得た主人公が煩悩のまま行動し、気に入った女の子を落としていく。

お約束全開、ねねこ萌え。
デコイ選択肢が多く、踏むとどうなるか分からないが、
エンドは各キャラ1つなので迷うほどではない。


グラフィック|立ち絵完璧、キャラデザ神。OPだけ残念

立ち絵は完璧。
キャラデザは神がかっている。

ただしOPムービーは神MAD職人以下の出来。
企業ならもう少し頑張ってほしいところ。

とはいえ、この絵師は本当に好き。


ヴォイス|無難で聞きやすいキャスティング

特におかしいキャストもおらず、全体的に無難。
聞いていてストレスはない。


サウンド|メロディラインがややくどい

曲が微妙にくどく、メロディラインが引っかかるものが多い。
悪くはないが、強く印象に残るタイプでもない。


システム|標準装備だが、既読判定が弱い

セーブ&ロード、バックログなど基本機能は揃っている。

  • 右クリックでシステムが出ないのは不便
  • 既読判定が弱く、ルートが違うと既読でもスキップされない

このあたりは改善してほしいポイント。


総評|実用性重視の“無難に良い”メイビー作品

抜きゲーではないが、Hシーンのボリュームは十分で実用性あり。
キャラ絵は良く、ボイスも問題なし。

良くも悪くも無難
尖った部分はないが、安定して楽しめる。

好きなキャラは瑚乃葉(漢字むずい)。
絵だけで60点という潔い評価。

【レビュー】はるのあしおと|美しく丁寧に作られた“完成形”のようで、どこか物足りないminori作品

【レビュー】はるのあしおと|美しく丁寧に作られた“完成形”のようで、どこか物足りないminori作品

シナリオ|丁寧で美しい、しかし“毒”がない

「失敗すればその人のせいにできるし、成功しても違う道を選んだほうが良かった、そう思うかもしれない。」
「誰に対しても優しくしたいのなら、特別な人間なんて作らないで!」

ある種のゲームは、この形をもって“完成形”と言えるのではないか──
そう思わせるほど、シナリオの完成度は高い。

東京で挫折した主人公が田舎へ戻り、引きこもり、そして人の優しさに触れて再起する。
言葉にすればありきたりだが、筋道を立てて丁寧に読ませる構成は見事。

モノローグを交えたキャラ描写は優しく、読み手に寄り添う。
構成面では最大級の評価をしたい。

ただし“毒”がない

綺麗で真っ直ぐすぎるがゆえに、外側から眺めているだけのような感覚が残る。
世界が完璧すぎて、崩れない。
そのため、読み物としては美しいが、心を揺さぶる“何か”が足りない。

唯一刺さったのはゆずきシナリオ

ゆずきルートは比較的良かった。
ただし、全体としてはminoriの掲げる「純粋でシンプルなものほど丁寧に」という理念が、
逆に“シンプルすぎる”方向へ振れすぎた印象。

美しいけれど、真っ直ぐすぎる。
その結果、「読むだけ」で終わってしまった。


グラフィック|OP・EDは最高クラス、新海の演出が圧倒的

手放しで評価できるクオリティ。
OP・EDともに最高レベルで、新海誠の演出力が存分に発揮されている。

ただしキャラデザが独特で、この時点で敬遠した人も多いはず。
人を選ぶビジュアルではある。


ヴォイス|西原うぜーと言いながら最後までやりきった

キャラに対して「うぜー」と思いながらも、結局最後まで聴かせる力がある。
声優陣は安定している。


サウンド|OPが強い、BGMも良質

OPは盛り上げすぎなくらい強い。
BGMも作品の雰囲気に合っており、全体的に良質。


システム|演出が重く、マシンパワー必須

基本システム搭載。
ただし演出が重いため、PCスペックはある程度必要。

minoriらしい“日常を日常以上に見せる演出”は健在。


総評|美しいが、感動の“深さ”には届かない

世間では「成長物語」「感動できる」「ハートフル」と評価されている。
確かに大筋はその通り。

しかし、感動できるかと言われると、少し過大評価ではないかと思う。

理由:演出は日常を美しくするが、感動を深める方向ではない

日常を日常以上に見せる演出は素晴らしいが、
それが“感動の深さ”に直結しているかと言われると微妙。

また、成長物語としては「一歩踏み出しただけ」で終わるエンディングも惜しい。

本来この手の作品に弱い自分が、なぜか泣けなかった。
期待が大きかったわけでもない(積んでいたくらいだし)。
理由は自分でもよくわからない。

ただ、美しい作品であることは間違いない。

得点:75点
好きなキャラ:ゆずき

minoriの次回作に期待したい。