【レビュー】春萌 ~はるもい~|田舎萌え×LSらしさ全開、だけど粗さも目立つ惜しい一作

【レビュー】春萌 ~はるもい~|田舎萌え×LSらしさ全開、だけど粗さも目立つ惜しい一作

シナリオ|序盤のテンションが飛ばしすぎてシュール

主人公:「そ、その、えっと、あててんですよ!」
ヒロイン:「……セクハラ?」

LS商業化第2作目となる本作は、田舎萌えを軸にした作品。
ただし序盤の共通ルートが飛ばしすぎ・滑りすぎ・シュールすぎで、テンションが異様に高い。

OHPのキャラ紹介にある「ネット回線云々」も、OPで触れられるだけで本編では一切触れられず、肩透かし感が強い。

小ネタは分かる人にはニヤリだが、散りばめすぎると諸刃の剣。
カラオケはWinkだよね?
そして野球ネタには愛を感じた。


沙緒ルート|クーデレのはずが“超脚本”で大暴走

噂のクーデレ枠だったが、正直これは厳しい。
テンションが合わず、やり取りが難解で、夏場シナリオの悪い方向が出てしまった印象。

Hシーンのロケーションも「なんでそこ?!」とツッコミ不可避。
思い出の車で…というのは分かるが、違和感が強い。

総じてテンションについていけなかった。


りるけルート|頭のたりない子、だけど最後で帳尻が合う

序盤は頭を抱える展開が続くが、エンディング付近でうまくまとまり、まずまずの流れに落ち着く。

ただし「なぜ葱好きなのか」など、設定の補強が欲しかった。


淡雪ルート|一番落ち着いているが、現実的に考えると疑問が残る

主人公は東京の有名私立、淡雪は地元の帝大。
帰省をきっかけに恋に落ち、遠距離恋愛へ。

しかしエンディングで淡雪が実家の商店に嫁ぐなら、最初からそうすれば…?
と現実的に考えてしまう。

落ち着いた良いシナリオだが、最後の選択に違和感が残る。


灰音ルート|おまけ扱いなのに一番面白い

三等親って結婚できないんだっけ?
人妻ルートなのに背徳感ゼロで、むしろそこが良い。

ただし後半〜エンディングがあっさりしすぎ。
尺があればもっと面白くなったはず。


総評(シナリオ)|前作よりはまとまったが、まだ“書き足りない”

設定がしっかりしているなら、最低限のフォローは必要。
説明不足のまま進む部分が多く、惜しい印象。

LSらしさはあるが、粗さも目立つ。
がんばれLS。


グラフィック|ムービーは良いが、塗りがやや不安定

OP・EDムービーは良い出来。
特にEDムービーでヒロインのセリフが入る演出は素直に感動した。

キャラデザは並。塗りが少し怪しい。


ヴォイス|問題なし、まきいづみは出来る子

全体的に安定。
まきいづみの演技は光っていた。


サウンド|主題歌が良い、榊原さんの歌声がハマる

主題歌「きっと夢と雪でできている」は聞くほどに良くなるタイプ。
榊原さんの歌声が作品に合っている。

BGMは特筆点なし。


システム|基本システム、分岐はりるけラストから

基本システム搭載。
りるけのラスト選択肢からエンド分岐。

3人クリア後に灰音ルートが開放される。


評価|65点(クラスB)

田舎萌え・LSらしさ・ムービー演出は良いが、シナリオの粗さが目立つ惜しい作品。

【レビュー】遥かに仰ぎ、麗しの|“ちゃんとした”エロゲーが帰ってきた、安心と満足の学園ADV

【レビュー】遥かに仰ぎ、麗しの|“ちゃんとした”エロゲーが帰ってきた、安心と満足の学園ADV

短評|久しぶりに安心してプレイできるクオリティ

丁寧に作られたシナリオ、魅力的なキャラ、安定した演出。
「久々にちゃんとしたエロゲーを遊んだ」と胸を張って言える一本。


シナリオ|本校と分校で“性質の違う物語”が展開

最初の選択で本校ルート分校ルートに分岐。
この2つはシナリオの性質が大きく異なる。

本校ルート:主人公がカッコいい

  • 全能感のあるタイプ
  • 好意に極端に鈍い典型的主人公
  • 爽快感のある展開

分校ルート:感情寄りで中庸的

  • 主人公がより人間的
  • 暗部の描写が強め
  • エロシーンが多い

どちらが面白いかは好み次第だが、主人公の魅力は本校ルートが上。

ヒロインの問題を共に解決し、恋仲へ

基本構造はシンプル。
お嬢様ヒロインたちが抱える問題を主人公と共に乗り越え、恋愛へ発展する。

なぜ本校と分校を分けたのか?

寮が違うだけで授業は同じ。
全校生徒54名という規模では“隔たり”が設定として機能していない印象。
書き分けのために分けたのだろうが、やや弱い理由に感じる。

そして全てを持っていく「風祭みやび」

本校ルートのヒロイン「風祭みやび」。
このキャラが強烈すぎる

見た目ロリだから油断していたら死ぬ。
「みやびーちゃんぷりてぃー!」と叫びかねない破壊力。

他キャラが薄いのではなく、みやび様が濃すぎる
これは宇宙の真理。

サブキャラの背景が少しずつ明かされる構成

攻略を進めるごとにサブキャラの背景が見えてくる。
同じ時間軸で動いているらしく、世界観の厚みを感じられる。

エピローグがしっかりしている安心感

各キャラの「その後」を丁寧に描いており、消化不良が起きにくい。
満足度の高いシナリオ構成。


グラフィック|OP・ED・キャラデザ・CGすべて良好

OP・EDともに高品質。
キャラデザ、立ち絵、CG、演出すべて安定。

エフェクトが重いのでスキップ時は解除推奨。
ただしデフォルメCGを見逃す可能性があるので注意。


ヴォイス|ナイスキャスティング、一色様も友情出演

声優陣は安定の布陣。
南ねーさんの破壊力は相変わらず凄まじい。


サウンド|OP・EDともにドン・マッコウ

特筆すべき点はないが、全体的に安定した仕上がり。


システム|バグなし、快適プレイ

基本システム搭載、バグなし。

  • 本校ルート:とても易しい
  • 分校ルート:易しい

全ルートクリアで最終話「遥かに仰ぎし、麗しの」解放。
校歌斉唱は卑怯。


総評|“みやび様”の存在が作品を決定づける

本校=健速、分校=丸谷。
逆だと思っていたが、健速がここまで書けるとは見直した。

どちらのルートも味があるが、最終的に印象を支配するのはみやび様
+10補正がかかるレベルの破壊力。

79と80の間には大きな壁がある。
80以上は「自信を持って他人に勧められるライン」。
補正を外しても80点に届く完成度だった。

(ネタバレ)ソフトボールの描写について

みやび様の投球が体感140km。
実測換算で110〜120kmのオリンピック級。
16mからそれを投げて、足元に転がすバント対策──
普通に打てるわけがない。
みやび様、恐るべし。


評価|80点(クラスA)

安心してプレイできる“ちゃんとした”エロゲー。
みやび様の存在が全てを持っていくが、作品全体の完成度も高い。

【レビュー】晴れときどきお天気雨|“お天気雨の章”がなければ崩壊していた、ぱれっと史上最大ボリュームの問題作

【レビュー】晴れときどきお天気雨|“お天気雨の章”がなければ崩壊していた、ぱれっと史上最大ボリュームの問題作

短評|お天気雨の章がなかったら悲惨だった

本編の大半がしんどい展開で構成されているため、「お天気雨の章」が存在しなければ評価は大きく落ちていたと思う。


シナリオ|NYAONらしさが薄れた、重くて進めづらい構成

今回の作品は、とにかくしんどい。
そしてまた一人、エロゲ界に駄目主人公が誕生してしまった。

NYAONの“優しい世界に毒を混ぜる”作風は健在だが…

NYAONの描く世界はまったり優しいのに、物語の中に毒を混ぜて日常を侵食していくスタイル。
しかし今回は、その毒が強すぎた。

なずなの設定が重すぎる

「なずな」の設定があまりにも枷。
しかも攻略対象に含まれているため、重さが倍増。
どのキャラでも“毒”として機能しすぎて、攻略対象として見る前にブレーキがかかる。

問題の主人公

エロゲ界の駄目四天王には及ばないが、

  • 恋愛原子核
  • 優柔不断
  • 鈍感
  • うつろぎやすい
  • 妹最優先

というパーソナルエンチャントが強烈。
一本道で進むごとにヒロインを振る選択肢を迫られる構成も相まって、読んでいて辛い。

構成の問題とも言えるが、主人公自身も悪い。
(詳細はネタバレになるので省略)

ただし、絢音ルートと「お天気雨の章」は良い

絢音はバックボーンが丁寧で、主人公との関係性もわかりやすい。
ぱれっと的なヒロイン像として非常に安定している。

そして「お天気雨の章」。
泣かせに来ているのは明白だが、整合性が取れており、構成としても美しい。

  • BADからの復帰を“ifルート→トゥルー”として扱う構造
  • 未来からの来訪者が求めた理不尽さを、未来を変えることで解決する展開

このあたりは非常に良かった。
やはり物語はまるっとハッピーエンドであるべきだ。


グラフィック|神月OPは良いが、解像度が時代遅れ

OPは神月作品で安定のクオリティ。
しかしキャラの解像度が昨今の基準に合っておらず、ぼんやりした印象。

ぱれっと、そろそろワイドにしようぜ。

Hシーンは各キャラ3〜4回で、内容も悪くない。


ヴォイス|AYAさんが元気で何より

コミパ好きとしてはAYAさんの声が久々に聞けて嬉しい。
他のキャストはいつも通りで特筆点なし。


サウンド|WHITE-LIPSと樋口秀樹の安定感

WHITE-LIPSのコーラスは相変わらず強い。
樋口秀樹もいつも通りで満足。


システム|話数仕立て+意味のあるBADEND

基本システム搭載。

話数仕立てだが、特に意味は感じない。
素直に順番にクリアするのがベスト。

香奈恵ルートは一度BADに入ってから「お天気雨の章」へ。
久々に意味のあるBADENDで、物語の流れとして良かった。

攻略時間は24時間。
ぱれっと史上最大ボリュームは伊達ではない。

難易度は易。選択肢は4つ。


総評|NYAONらしさが消えた“オーラのない”作品

「本当にNYAONが書いたの?嘘でしょ?」
進行中に思わず口に出してしまうほどの衝撃。

抽象的な表現は好きではないが、一言で言うなら“オーラがない”

もし無名メーカーの作品なら、
「途中まで残念だったけど、最後のトゥルーがやりたかったんだろうし許すか」
となる。

しかし、NYAON3年ぶりの新作がこれでは泣くしかない。

問題点

  • 先の見える展開
  • 相手に依存する構造
  • フックの弱さ
  • 負のフラグの連発
  • 言及対象が曖昧

NYAONらしさが薄く、ブランクの影響を疑ってしまう。


評価|68点(クラスB)

“お天気雨の章”が救った作品。
NYAONの復活を期待していた分、落胆が大きい一作。

【レビュー】はぴねす!|魔法学園×萌え×ツンデレの王道ADV、期待とズレの狭間で揺れる一作

【レビュー】はぴねす!|魔法学園×萌え×ツンデレの王道ADV、期待とズレの狭間で揺れる一作

シナリオ|“まぁ、まぁ”の出来。期待した方向には走らず

本作はルート開放型で、進行順は以下の通り。

  • 神坂・柊(ツンデレ)
  • 高峰・小日向
  • 上条・式守(ツンデレ)

学園ファンタジーとしてはよく出来ている部類ですが、魔法設定をもう少し掘り下げてほしかったというのが正直なところ。
テキストは萌え路線+シリアス+ドタバタのバランス型。

主人公の“潜在能力”が活かされない惜しさ

主人公に潜在能力がある設定なので、某少年漫画のように覚醒していく展開を期待していたのですが──
柊ルートから入ったため、主人公がほぼ活躍しない。

全ルートを終えても、主人公がガンガン魔法を使う展開はなし。
ただし、ところどころ活躍の場はあります。

シナリオ全体の印象

深くもなく浅くもなく、本当に“それなり”。
ただし最後のルート(グランドフィナーレ)はまとまりが良く、一番話が通る印象。

……どう見ても、ねぎ。


グラフィック|OPと背景は良いが、HCGの構図が気になる

OPムービーは良く、背景も高品質。
しかし、CGの構図が妙におかしい。特にHCG。

キャラデザは意図的な方向性なので問題なし。
そして何より、うぃんどみるが“炉路線”から戻ってきたのが嬉しい。

魔法演出には力が入っており、そこは高評価。


ヴォイス|安定のキャストだが、キャラ被りが気になる

最近のエロゲーでよく見るキャスト陣。
出演作が多すぎてキャラが被りまくるのは仕方ないところ。


サウンド|良いチーム構成、OP「ZERO」はガチ

サウンドは全体的に良い出来。
クレジットを見ていないので制作チームは不明ですが、質は高い。

そしてOP、佐藤裕美の「ZERO」はガチ。


システム|基本は快適、右クリック起動が欲しい

基本システム搭載。
右クリックでシステムを起動してほしかった。

選択肢ジャンプやリターンがあるのでクイックは不要な気もするが、便利ではある。

回想の一番下の欄はBADED(バッド的な何か)なので、埋めなくてもOK。


総評|魔法世界の“生活感”がもっと欲しかった

魔法が当たり前の世界なのか、生活に溶け込んでいるのか──
そのあたりの描写が弱く、魔法学校の意味が薄く感じられたのが惜しい。

作品としてはよく出来ているものの、期待していた方向に進まなかったため、個人的にはやや物足りない印象。

ツンデレ指数

  • 柊:70(+金髪ツインテール補正)
  • 式守:50(デレが少ないがツンは強烈)

……今度からツンデレ評論家として(略)。

全体的に落ち着いた作品で、一般向けには十分おすすめ。
Hシーンもそれなりにあり、気軽に楽しめるタイプ。

うまく意味が伝わっていれば幸い。


評価|74点(クラスB)

魔法描写の物足りなさはあるが、安定した学園ファンタジーADV。

【レビュー】花咲くオトメのための嬉遊曲|女子野球×エロゲーという未踏ジャンルを本気で形にした奇跡の同人作

【レビュー】花咲くオトメのための嬉遊曲|女子野球×エロゲーという未踏ジャンルを本気で形にした奇跡の同人作

シナリオ|女子野球への愛と“萌え×燃え”が本気で融合した作品

「それが私とバットの約束だ。」
「打棒はその時の虚実の皮膜を切り裂く勇気の刃だわ。」

長くなるので最初に結論だけ言うと、

「とても面白い」

昔、エクシング掲示板で「ラブリースターが駄目だったから虹色ドッチボールに流れるぜ」と言った自分に賛同してくれた皆さん──
あの頃みんなが求めていたものは、確かにここにあります。

女子野球モノでありつつエロゲー。
このジャンルを愛してきた自分のために作られたと言っても過言ではない内容。

攻略キャラは3人、ハッピーエンドは3つ

(※当初の誤記を訂正)

女子野球が“認可されている世界”の説得力

女子野球が世間的に認められ、大会も存在する世界。
新設校で人数が少なくても、魅力的で戦力になるキャラが集まる──
この「少ないなら集める」という最初の一歩をちゃんと描いている点が非常に高評価。

「萌え」と「燃え」を正しく理解している

女子野球モノに必要な二大要素、萌えと燃え
この作品はその両方をしっかり理解し、丁寧に描いている。

野球描写が“本物”

経験者が読んでも技術的に違和感がない説明。
野球を知っている人が書いているのが伝わる。

※ただし変化球の「カッター」は今時「カットボール」だと思う。

同人ならではの“ニヤリ”要素

天地ファンなのかカレードーナッツファンなのかわからないが、
自分もファンなのでニヤリとせざるを得ない場面が多数。
同人って素敵。

惜しい点

  • セリフ回しが少しクドい
  • ルートが少ない
  • 魅力的なキャラを攻略できない
  • 主人公のキャラが青臭い(高校生だから仕方ない?)

とはいえ、女子野球という未開拓ジャンルをここまで形にしただけで拍手喝采。
LOVER-SOULに感謝しかない。


グラフィック|同人レベルだが、それが逆に安心する

シナリオの熱量に比べるとグラフィックは同人レベル。
しかし、それがなぜか安心感につながる。

OPムービーは企業レベルの完成度。
外注か内部かは不明だが、シナリオを抱擁する良いムービー。


ヴォイス|なし(妄想が捗る)

ボイスなし。
もし付けるなら色々こだわりがあったのだろうと妄想が膨らむ。

自分は紅葉に長沢(ry。


サウンド|可もなく不可もなく、OPは良い

音楽は気にならないレベル。
もっと悪い企業もあるし、もっと良い同人もある。

OPの歌詞は素敵。


システム|基本的で問題なし、音量調整は欲しい

基本システム搭載。
ただし音量調整は欲しかった。


総評|女子野球モノの“理想形”に限りなく近い

女子野球モノの分類

女子野球作品は大きく2つに分かれる。

  1. 世間的に認可され、大会がある世界(例:ドキプリ)
  2. 認可されておらず、男子の中で女子が戦う世界(例:プリンセスナイン)

さらに魔球の有無で分類も可能。

本作は前者+現実的な野球描写という非常に珍しい立ち位置。

女子野球モノに必要な“萌え×燃え”を完全理解

恋愛に傾きすぎてもダメ。
プレーばかりでもダメ。

女子野球モノは萌えと燃えの両立が絶対条件。

本作はそれを完璧に理解している。

野球はドラマでありドキュメンタリー

野球は最もドラマになりやすいスポーツ。
女子だから+αではなく、どちらも等価値。

技巧派バッターが活躍しないのは残念だが、
流し打ちでヒットを稼ぐキャラに「萌え」、
二遊間が華麗にゴロを捌けば「燃え」。

その努力を本作は確かにしている。

女子野球は万人受けしないが、それでも挑んだ価値がある

野球が嫌いな人には刺さらない。
しかしドラマとして見れば十分通用する。

このジャンルが再び盛り上がることを願うし、
白球を追う女の子をもっと見たい。

本作はその願いを形にした奇跡の一作。

好きなキャラ:氷室乃雪

「それが私とバットの約束だ。」
このセリフだけでメロメロ。

評価:90点(実質100点)

同人でここまでやったLOVER-SOULに最大級の敬意を。
粗探しするのは野暮。

女の子が白球を追って何が悪い。
高野連、認可した大会作ってくれ。

【レビュー】H2O ~FOOTPRINTS IN THE SAND~|ポップな雰囲気の裏に潜むシュールな二部構成ドラマ

【レビュー】H2O ~FOOTPRINTS IN THE SAND~|ポップな雰囲気の裏に潜むシュールな二部構成ドラマ

H2O ~FOOTPRINTS IN THE SAND~』は、ポップな雰囲気とは裏腹に、内容はかなりシュールで重め。
第一部の“部落差別”という深いテーマから、第二部の都会編へと移る構成は独特で、SCA自らしいクセの強さが光ります。


短評|ポップな外見とシュールな中身のギャップ

「言葉にできることくらい…言葉にしたいと思うんだよ」──音羽
作品の雰囲気は軽やかだが、テーマは重く、SCA自らしい独特の世界観が展開されます。


シナリオ|良い部分と“納得できない部分”が混在する二部構成

SCA自といえばケロQ。
自分が唯一プレイしたケロQ作品が『終ノ空』だったため、7年ぶりの邂逅で「相変わらずこのテキスト調か…」と懐かしさすら覚えました。

一部:盲目の主人公と差別の溝

盲目の主人公が、差別で隔てられたヒロインたちの関係を取り持ち、自身の目を取り戻し、ヒロインに惚れられる──
簡単に言えばそんな話。

雰囲気は良いし、展開に目をつぶれば悪くない。

納得できない点:次回作『サクラの詩』のキャラを投入

最大の違和感は、枕の次回作『サクラの詩』のキャラが本作に登場すること。
しかも重要ポジションなのに、出番はほんの少し。

前作キャラならまだしも、次回作キャラを出されても意味がわからない。
終わっても「このキャラ何だったの?」で終わるのは問題。

攻略対象は3人+アナザーエピソード

最後の音羽ルートを終えるとアナザーエピソードが解放されますが、
主人公の“目の謎”の説明が蛇足。
ここまで来たら説明しなくても良かったのでは…と思ってしまう。

「アナザーだから」という逃げ道も気に入らない。

惜しい点:一部を削ってアフター中心にした方が良かったかも

セリフは良いものが多いのに、一部の構成が足を引っ張っている印象。
主人公が光を取り戻す理由よりも、どうしようもない状況での立ち回りの方がリアリティがあったはず。


グラフィック|背景・キャラデザ・ムービーすべて高品質

背景、キャラデザ、OP、EDムービー──どれもクオリティが高く、文句なし。


ヴォイス|実力派揃い、一色ヒカルはさすが

一色ヒカルは“真の兵”と呼べる実力者。
榊原ゆいはやや浮いている印象。

しかし、矢沢泉という声優が非常に良い演技をしており、声の幅も広そう。
今後注目したい存在。


サウンド|特筆点なし

音楽面は無難。特に強い印象はありません。


システム|ほぼノベルゲー、選択肢は片手で数えるほど

基本システム搭載。
選択肢は非常に少なく、難易度は易。

ほぼノベルゲームとして楽しめます。


総評|良い部分も多いが、構成の“惜しさ”が目立つ

二頭身演出のカットは笑えたし、アフターストーリーも面白い。
ヒロインの属性や掘り下げも好み。

しかし──

  • “わからないまま終わる次回作ヒロイン”
  • “最後で説明されてしまう主人公の目の謎”

この2点がどうにも引っかかる。
どちらも次回作に持ち越しなら納得できたかもしれない。

とはいえ、総合的にはよく出来ており、楽しめた作品。
SCA自の世界観が好きな人、未経験の人には十分おすすめできる。

好きなキャラ:はやみ(ツンデレツンデレ)。
小日向とひなた──名前の付け方も良い。


評価|71点(クラスB)

雰囲気・演出・キャラは魅力的だが、構成の惜しさが残る一作。

【レビュー】G線上の魔王|るーすぼーい節が冴え渡る、愛と落差のサスペンスADV

【レビュー】G線上の魔王|るーすぼーい節が冴え渡る、愛と落差のサスペンスADV

G線上の魔王』は、るーすぼーい特有の“愛”と“落差”を軸にしたサスペンスADV。
狂気と偏愛の中に救いを求める作風は健在で、王道的な盛り上げ方と緻密な構成が光る作品です。


短評|るーすぼーい作品の本領発揮

兄弟愛・親子愛といった“歪んだ愛の形”を描きつつ、感情の落差で魅せる構成は健在。


シナリオ|愛と落差で魅せる緻密なサスペンス

るーすぼーいは、どれほど狂気に満ちた愛でも「そこに愛がある」と信じて描くタイプのライター。
本作も例外ではなく、狂気の中に救いがチラつく構造が特徴です。

落差が生むエンタメ性

表面上の落差を大きくつけることで感情の振れ幅を生み出す──
この手法が本作でもしっかり機能しています。

ミスリードは控えめ、だが王道の巻き込み方が秀逸

今回は「驚くべき」ミスリードは少なめ。
しかし終幕への巻き込み方は王道そのもので、るーすぼーいの味がしっかり出ています。

設定の裏付けが緻密で、ユーザーに“解く楽しさ”を残す構成は見事。

花音ルートは屈指の泣き所

特に花音ルートは秀逸。
ラストのスケートリンクのシーンは、展開が読めていても泣ける名場面。

ベタで捻りがないのに泣ける──
その“恐れずに滑る少女”の姿が本作屈指の感動ポイントです。


グラフィック|安定の有葉クオリティ

原画はいつもの有葉。大きな変化はないものの安定したクオリティ。

OPムービーは神月氏によるもので、雑踏を行き交う視線の構成が印象的。


ヴォイス|第二種声ゲー認定の豪華布陣

河合さん、らっぱすをはじめ、声優陣は安定の実力派。
紫華すみれの滑舌が気になったが、主人公の苗字が“紫華”と知って妙に納得。

全体的に安心して聴けるキャスティングです。


サウンド|大胆アレンジ+豪華アーティスト陣

大胆なアレンジが施されているものの、元が名曲揃いなので違和感なし。

テーマソングは烈火 → 彩菜 → 茶太という豪華ライン。
特に彩菜の挿入歌は素晴らしく、Elements Gardenの強さを再確認できます。


システム|基本は快適、細かいバグあり

基本システムは問題なし。

  • フルスクリーン時は解像度設定を変更しないと左右に帯が出る
  • イベント区切りでタイトルに戻るバグあり(環境依存?)

一本道構成で、1章につき1ヒロイン。
難易度は易しめ、攻略時間は約13時間


総評|完成度は高いが、終幕の“早まり感”が惜しい

作品全体の質は非常に高く、面白い。
しかし終幕のフェードアウトが惜しい。

答えは示されているものの、主人公の“その先”をもう少し見せてほしかった。
完結させる気概は感じるが、リリースポイント手前で放り投げられた印象が強い。

昨今の「FDで補完する流れ」を思わせる読後感があり、手放しで傑作とは言いづらい。


評価|78点(クラスA)

るーすぼーい節がしっかり堪能できる良作。
終幕の弱さだけが惜しいが、全体としては高い完成度のサスペンスADV。

【レビュー】グリーングリーン2 -恋のスペシャルサマー-|前作未プレイでも楽しめるが、締めの弱さが惜しい続編ADV

【レビュー】グリーングリーン2 -恋のスペシャルサマー-|前作未プレイでも楽しめるが、締めの弱さが惜しい続編ADV

グリーングリーン2 -恋のスペシャルサマー-』は、あのグリーングリーンの続編。
続き物は不安がつきまとうものですが、結論としては「楽しめた」作品でした。


シナリオ|馬鹿ノリ全開は健在、だがエンディングが惜しい

舞台は前作と同じ鐘ノ音学園。
時系列は2年後で、前作キャラは3年生として登場します。
前作を知っている人ならニヤリとできる場面も多いでしょう。

ノリは相変わらず“逝っちゃってる感”満載で面白いのですが、問題はエンディング
どのキャラも幸せにならない展開で、どうにも納得がいきません。

ストーリーに一部破綻が見える部分もありますが、そこは他のゲームでもよくある話なので目をつぶれるとして……
エンディングの救いのなさだけはどうにも引っかかる。

ただし、最後まで通してプレイすると、本作が前作の“救済”を含んだ補完シナリオであることが分かります。
それでも「なんだかなぁ」という気持ちは残るのですが。


グラフィック|片倉マンセー、それだけで語れる

片倉氏の絵が好きなら満足度は高いはず。
文句なしのクオリティです。


ヴォイス|全体的にレベルが高い

アニメ版キャストがそのまま起用されていると思われ、安定した演技。
特に不満はありません。


サウンド|音楽は相変わらず強い

グローバーは音楽に力を入れている印象が強く、今回も良い出来。
OPもEDも耳に残る仕上がりです。


システム|基本は快適、セーブがやや重い

基本システムは問題なし。
ただし、セーブが少し重いのが難点。
バグは特に見当たりません。


総評|前作未プレイだとノリきれない部分もあるが、テンポは良好

前作をやっていない状態で続編に挑むのは抵抗がありましたが、積むのも忍びなくプレイ。
結果として楽しめたものの、やはり前作を知っている方が圧倒的に楽しめる作品だと感じました。

テンポが良く、会話もサクサク進むためプレイしやすいのですが、物語の締めが弱い。
最近はハッピーエンドにならないゲームが増えていますが、個人的にはつらいところです。

全キャラ攻略後、ETCにて緑シナリオが出現。
これが本作の根底を成す内容だと思われますが、やはり前作を知らないとノリきれない部分が残ります。

好きなキャラ:無し。


評価|72点(クラスB)

出来は良いが、エンディングの弱さと前作依存度の高さが惜しい続編ADV。

【レビュー】グリンスヴァールの森の中 ~成長する学園~|安定のグダグダ感と堅実な完成度を両立したソフトハウスキャラの良作

【レビュー】グリンスヴァールの森の中 ~成長する学園~|安定のグダグダ感と堅実な完成度を両立したソフトハウスキャラの良作

グリンスヴァールの森の中 ~成長する学園~』は、ソフトハウスキャラらしい“グダグダ感”を残しつつも、本編の構成がしっかり優遇された堅実な作品。
シミュレーション部分も安定しており、シリーズの中でも“超無難ゲー”としてまとまっています。


短評|相変わらずのグダグダ感(褒め言葉)+本編の構成が成功

いつものようにショートストーリーに重要要素が隠れている……ということもなく、本編がしっかり作られているのが好印象。
シミュレーションパートも安定しており、ソフトハウスキャラ作品として非常に“固い”一本です。


シナリオ|お約束を守りつつ、攻略の楽しさをしっかり提供

まず心得るべきこと

  • 作業ゲーの中に楽しみを見出すこと
  • クイズは分からなくても挑戦(最大+400人の特典)
  • 行き詰まったら発想転換
  • セーブデータに頼るのは“本当に無理”な時だけ

この心得を胸にプレイすると、作品の魅力がより引き立ちます。

選べるモードは5種類

  • クライスモード(50年):まずはここから慣れる
  • シャルロットモード(100年):攻略対象はニキ・歌焔・メルエ
  • 三人娘モード(100年):攻略対象はヴィヴィ
  • ヴィヴィアンモード(100年):ヴィヴィ・シャル・ハーレム
  • フリーモード(300年):やり込み用、全対象

「シャルモードだからシャル攻略できる」と思った人は……お疲れ様です。

エンドは全11種

シャル3、ヴィヴィ4、その他各1+ハーレム。

軽い攻略ヒント

  • 三人娘モード:建物を平均的に建てる
  • ヴィヴィモード:軍備拡張→卒業→評価上げ
  • シャルED:淫夢全回収+ひたすら話しかける(シビア)
  • フリーモード:とことんやるだけ。葵屋あり

シナリオの出来は良好

プロローグから期待を持たせ、最後までその期待を裏切らない構成。
Hシーン重視ながらもショートショートを挟み、ギリギリで軸を守るバランスが絶妙。

序盤の展開が後半の踏み台になっているのは強引だが、テキストの“グダグダ感”がそれを許容させてしまう。
ヴィヴィの軸とシャルの展開が合わさって一本の作品として成立している印象です。

微笑ましいやり取り、グダグダ、作中劇、おまけの笑い──
いつものソフトハウスキャラ節がしっかり詰まっています。

「巣作り」の中毒性には及ばないものの、全体としてよくまとまった良作。


グラフィック|佐々木珠流の安定感+濃いエロ

佐々木珠流のキャラデザは安定のクオリティ。
エロは濃く、枚数も十分。

おまけムービーも健在。
DVDの omake フォルダにあるムービーは必見。外人ネタは反則級に笑える。


ヴォイス|歌焔の中の人だけ惜しい

全体的には良いキャスティング。
ただし、歌焔役のカンザキカナリは調子が悪く、噛み気味で発音も不安定。
戦闘ボイスは特に聞き取りづらい。

ADVパートではそこまで気にならないが、一度“さ行”が気になり始めると終わる。

本来は出来る声優なので、デュアルセイバーのリリィを聴けば実力が分かるはず。


サウンド|OP歌手はもっと探すべき

OPの歌い手は……もっと良い人を探してほしい。
「オクラホマミキサー」で和むのは良い。


システム|基本は安定、資金周りにややクセあり

基本システムは問題なし。
ただしセーブ&ロードの操作性がやや悪い。

資金生産系の収入が一定でないのは仕様と思われるが、気になる人は気になるかも。

パッチ1.01での修正

  • 収支「その他」の計算式を更新
  • 三人娘/ヴィヴィアンモードで歌焔攻略が難解だった点を改善
  • 誤字修正(排出→輩出)
  • ヴィヴィアンモードで研究所建設イベントを中止

難易度は高め。フラグ管理は相変わらずシビア。


総評|“巣作り”には届かないが、確実にその次に来る良作

最近のソフトハウスキャラ作品は「巣作り」基準で語られがちですが、本作はそのすぐ後ろにつける完成度。

戦争を自発的に起こせたらもっと面白かったと思うものの、軍備拡大→資金テコ入れ→モンスター戦など、遊び方の幅は十分。

このメーカーの醍醐味である“試行錯誤の楽しさ”がしっかり味わえます。

好きなキャラはヴィヴィ(アンアン)。
今回も可愛い。


評価|77点(クラスA)

グダグダ感と堅実な構成が両立した、ソフトハウスキャラらしい良作。
試行錯誤が好きなプレイヤーには特におすすめです。

【レビュー】GRANDIAⅢ|冒険活劇はどこへ?シリーズの輝きを見失った残念作

【レビュー】GRANDIAⅢ|冒険活劇はどこへ?シリーズの輝きを見失った残念作

GRANDIAⅢ』は、かつて冒険活劇として高い評価を得たグランディアシリーズの最新作。しかし、本作は期待していた方向性とは大きく異なり、シリーズファンとしては落胆の大きい内容でした。


シナリオ|“あの冒険活劇”はどこへ消えたのか

まず最初に感じたのは、期待していたものとまったく違うという失望感。
ジュブナイル的な青さはあるものの、見どころがほぼ存在しません。

超展開の連続で意味不明

ストーリーは超展開の連続。
エンディングはあっけなく、ラス前の“挫折展開”も無理やり感が強い。

ヒロインの魅力が致命的に薄い

ヒロインがブラコン気味で魅力がなく、物語を牽引する力が弱い。
キャラに魅力がなければ、ストーリーが面白くなるはずがありません。

総じて、とにかく意味がわからなかったというのが正直な感想です。


グラフィック|背景は美しいが、キャラモデルが厳しい

キャラデザは吉成曜(EVA作監、VPキャラデザ)。
淡いタッチと美麗な線を期待していたものの、3D化するとイメージと大きく乖離。

背景やムービーは綺麗に仕上がっているだけに、キャラモデルの違和感が際立ちます。


ヴォイス|俳優起用が裏目に出た

ヒロインだけでなく、周囲のキャラの演技も厳しい。
声優ではなく俳優を起用するなら、もっと上手い人を使うべきでした。

このレベルだと、正直“邪魔”に感じてしまう場面も。


サウンド|遺産を食いつぶしている印象

食事シーンなどの曲はシリーズから引き継がれていますが、新鮮味は薄い。
良い意味での継承というより、遺産を食いつぶしている印象が強いです。


システム|戦闘は楽しいが、移動が重い

戦闘システムは『1』に近い感触で、これは非常に良い。
戦闘自体はかなり楽しいです。

しかし、

  • オーブシステムがバランスを崩す
  • 移動アクションが重い

といった問題もあり、快適とは言い難い部分もあります。


総評|グランディアの“劣化”を見るのがつらい

かつて「まじすげぇ」と思わせてくれたグランディアが、徐々に劣化していく様子を見るのは本当に忍びない。

『1』でワクワクした“世界の壁のチークタイム”のような冒険心をくすぐる演出は皆無。
食事シーンも回想消化に使われており、発展性が感じられません。

最大の問題はキャラクターの魅力不足
設定はどうとでもなるが、キャラが魅力的でなければ物語は成立しない。

この出来を見ると、NDSの『ルナ』が怖くなってきます。


評価|65点(クラスB)

戦闘は楽しいが、シナリオ・キャラ・演出の弱さが目立つ残念作。
シリーズファンほど落胆が大きいタイトルでした。